異世界甲冑女子戦記アオイとエリザベート・そのほかの者たち

ジャン・幸田

文字の大きさ
4 / 53
第一章・異世界にやって来た高校生

02.帰り道は荷物持ち

しおりを挟む
 アオイと一緒にいたのは剣道部員のエリザベート・ハインリッヒだった。彼女は父がドイツ人で母が日本人とドイツ人のハーフという四分の一だけ日本人という女の子だった。でも日本に生まれた時から暮らしていたので、外見はドイツ人でも中身は日本人と変わらなかった。

 「阪垣くん待った? 悪いんだけど手伝ってくれないかな? これ持ってよ!」

 アオイとエリザベートは悠亮に剣道の防具を持たそうとした。なぜなら大雨が降りだしたからだ。そのかわり傘はさしてやるという事だ。そのあと悠亮は女の子二人に傘をさしてもらいながら剣道の防具を二つも背負って帰るという羨ましいようでそうでもない姿を同級生たちに見せながら高校をあとにした。この時の三人が帰る姿は多くの人たちにとって最期の姿と認識されたのは、その直後だった。

 あまりにも雨が強いので高校から最寄りの駅までは「スカイラインつつじケ丘線」に乗ることにした。そのロープウェイは高校がある新興住宅地が丘の上にあるのに対し、JRの最寄り駅が谷底にあって標高差もあるので直線距離は短くても道路が相当迂回しているので、それなりに利用者がいるとして建設されたものだった。

 ただロープウェイといってもゴンドラは小さく六人乗りだったので三人と防具を乗せたところで客室内はいっぱいになった。この日は麓の駅から登ってくる乗客は多かったが、高校の帰宅時間は大幅に過ぎていたので、悠亮たち三人以外に乗ろうとする生徒は少なかった。その日は夏至だったので陽が暮れるのは遅いはずだったが、まだ日没前なのに激しい雨をもたらした雨雲のせいで薄暗かった。ただ、はげしい雨のせいでゴンドラはなかなか出発しなかった。

 「阪垣くん、なにを読んでいるんのよ? なんか怪しげだね!」

 悠亮が取り出したのは古本屋の百円コーナーにあったハードカバーの本で、藤村徹治著「平行世界との回廊」という疑似科学とされるものだった。本当のことを言えば1000円分買えばくじがひけるセールで金額を合わせるために買ったのだった。

 「いやあ、これはね、ほらよくあるじゃないのライトノベルなんかで、突然別の世界に転生したり転移したりするって設定が。その設定を科学的に説明するっていう本なんだよ」

 「へー、そうなの? それでなんかわかったの?」

 「まあ、わからない! なんだって僕は文系で物理なんか弱いから」

 エリザベスと話をしていたらアオイが話に割って入って来た。

 「そんなの出まかせに決まっているじゃないのよ! そりゃ私だってそんなオカルトみたいなお話好きだけどありえないじゃないのよ。突然違う世界に行ったり生まれ変わっても前世の記憶があるだなんて!
 話としては面白いけど科学的に説明しようというなんてナンセンスよ! それよりも防具濡れていないか確認してよ一緒に!」

 アオイに促され悠亮たちは運んできた防具を確認しはじめた。梅雨の多湿と高温のため袋を開くと汗臭い匂いが漂ってきた。その匂いはもちろんそこにいる女子二人の体臭がしみついたものだった。女子なら本当ならそんなものを男に触らせるなんていやなはずだが、二人とも悠亮を信頼しているというか従士のような存在と思っているらしく平気なようだった。

 「これって、かえって着るの? 今日はやめた方が良いんじゃないの?」

 「いいえ、着るのよ! 着た後で干せばいいんだから。明日は休みなんだし構わないじゃないのよ!」

 アオイはそういったが、このまま三人が電車に乗って住む町に帰ったら、アオイの家のトレーニングルームで三人で剣道の練習をするはずだった。もちろん悠亮は練習の手伝いだった。そう、そのあと起きる事がなければ、やるはずだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】

忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

性転のへきれき

廣瀬純七
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...