婚約破棄された令嬢は怪物のような戦士に生まれ変わる

3 破棄

　納骨堂をけ破るようにして入ってきた者が持っていたのは、政府からの命令書であった。だがその者は異形の姿をした化け物のような姿だった。

　「ヴィクター家のお前ら！　これは婚約内定破棄及び逮捕状である！　容疑は国家反逆罪である。連行する！」

　父はなんとなく予感していたようであるが、クリスの方は唖然としていた。あんまりな扱いに。

　「それって一体どういうことですか？　私たちはお国のために尽くしてきたのですよ」

　クリスの悲痛な声が納骨堂の冷たい床や壁に反響したが、その者たちには無意味だった。なぜなら髑髏が甲冑を着たような連中であったから。地獄からの使者が存在すれば誰もが想像するだろう者たちは二人にこう言い放った。

　「それは通用したのは過去のことですよ。これからは我々が判断することですから」

　その時、国は既に影の存在にとって代わっていた。逮捕されたクリスが連れ込まれたのは皇宮の北塔であった。ここは忌まわしい重罰囚人が収監されるとこにあった。入る前から中からは泣き叫ぶ声が聞こえていた。ここでは拷問が行われていたのだ。老弱男女貴賤関係なく！　影によって粛清されていた。

　「これはいったい？」　もはや風前の灯のクリスが尋ねた。

　「決まっているんだよ、皇太子殿下の命令さ。もうすぐ皇帝陛下になるがな」拷問を行う鬼のような男はそう言い放った。

　皇太子殿下が？　それって一体？　あれほど慈愛に満ちた穏やかな婚約者が？　クリスは不思議に思っていたら、それを察した男はこうつぶやいだ。

　「知る必要はないな、お前はここで死ぬのだからな！　何だってただの人間にはもう用はないからな」

　「あなた達だって人間ではないのですか？」

　「いや、我々はもうすでに変わっているんだ！」

　そう言って男が見せたのは。口の中から異様な舌、いやなんかの触手みたいなものであった。クリスは絶叫した。