25年前の約束 あの頃の彼女のままでした

京香が来た

８

　僕はベンチで座っていた時、ソシャゲに夢中になり周囲がみえなくなっていた。このとき、数多くの人々が通り過ぎていたようだが気にならなかった。それだけのめり込んでいた。そのとき、やっていたのは美少女ものだった。まあ、簡単に言えば四十もすぎていまさら恋愛、なんていうものは絶望的なので、ゲームの中だけでもやってみたかったのだ。

　京香との約束といっても、そんなものは当てにもならないし、相手だって同じ歳のはずだ。中年の女性が来るはずだから。まあ、来たとしたら奇跡だろうし、来たら何をするかなんて考えてなかった。それはその時だと思っていた。

　到着からしばらくたって、ふと11時前になっているのに気付いた。それで頭を上げてみると一人の少女がウロウロしているのがわかった。それで立ち上がってみると、その少女が近寄っていた。

　その少女は学校の制服で、白い半そでブラウスに赤いリボン、どこかで見たことあるものだった。しかも相手がものすごい勢いで突っ込んできた。

　「あんたは山村敬冶くんよね？　覚えてくれていたんだ！」

　その少女に会ったことはあったはずだが・・・思い出せなかった。

　「そうだけど・・・どこであったというのだ、君と？」

　僕の記憶の底から何かが浮上していた、まさか？

　「そうよ！　約束だったでしょ！　あんた守ってくれたんだ！　あたしよ、中沼京香よ！　デートする約束だったよね。だから来たんじゃないのよ！」

　目の前にいたのは京香だった！　でも、おかしい！