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(一)バイト先の朝
9.ローズマリー行きを命ぜられた聖美
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美咲がエリカの機ぐるみを着る数時間前のことである。都内有数の規模を誇る電器店「ジャイアント・カメラ」従業員の赤松聖美が店長室に呼ばれていた。彼女は新入社員とはいえ先日大事な顧客を激怒させる不始末を仕出かしていた。
「赤松君、いくら藤井様がセクハラまがい言動をしたからといって、あの態度はないだろう。あの後君の上司の嶋主任がどれほど苦労をされたのか理解できるだろう? 」と叱られていた。
聖美は客の藤井から接客態度が悪いのは美人な事を鼻にかけているのだといわれ、思わず口答えをしてしまったのだ。それがきっかけで騒動になった。
「確かに向こうも悪い点があったのは認めるよ。しかし、だからといって罵詈雑言の類を相手に浴びせるのはサービス業に従事するものとしては失格だ。
本当なら配置換えで在庫管理係りといった接客しなくてもよい部署に配属というところだが、もう少し売り場で努力してもらいたい。
そこでだ、君はガイノイド売り場担当とし、その販売促進活動要員としてしばらくサイバーテック社さんに協力してもらう」と店長がいったが、聖美は意味がわからなかった。
「君は、ボーナス商戦の間、機ぐるみに入ってもらう」といわれようやく意味がわかった。
自分はガイノイドスーツを着せられるということを。あの売り場で稼動しているガイノイドの多くは実際には人間が入っていることは店内ではよく知られていることであったが、当然客には内緒であり「中の人」などいないとされている。そのため機ぐるみを着れば赤松聖美なんていません。ということになる。
聖美はいやいやであったが、いまさら抗議しても機ぐるみ着用の決定が覆るとは思えなかったので、店長に促されるまま、人間を機械で覆う装着マシンのある地下六階に向かった。
しかたなく地下六階にある装着装置に向かった聖美であったが、不安半面少し嬉しかった。前から機ぐるみを着てみたかったからだ。人であって人ではない、機械であって機械ではない、という中途半端な存在になれるからだ。しかも機ぐるみを着てしまえば衣装を気にすることも化粧をすることも必要なくなるし、美人な今の自分を演じる必要もなくなるから、楽だと思ったのだ。
地下にはサイバーテックから派遣されたガイノイド技士の野間美玖がいた。本来は「ジャイアント・カメラ」で販売されたガイノイドやアンドロイドを点検するのが仕事だが、人間を機ぐるみの中に閉じ込める作業も請け負っている。
「おやおや、あなたがローズマリーになるの? 少しおしいような気がするけど頑張ってちょうだい」と野間が言った。なんでもローズマリーというガイノイドは受注生産を歌っているが、実際は量産型で外見よりも機能重視なので女性らしさを感じないただ大きな機械だという。また、ほかの店では男性が入っているケースもあるという。
その話を聞いて聖美は少しがっかりした。サイバーテックのブースにあるエリカを思い浮かべていたからだ。あの機体は胸もあり腰も引き締まったスレンダーなボディで、女の自分が見てもあんな体型に憧れてしまうほどであった。
しかし、聖美が着用する機ぐるみの写真にあるローズマリーは大量生産された人形といっても過言ではない平凡な外観だった。頭部は全体的につるつるした感じで、顔面には二つの丸いレンズとセンサー光が発光している。ボディも申し訳ない程度の胸があることを除けば、大昔のブリキのおもちゃといってもいいぐらいの平坦なイメージを受けるものであった。
「赤松君、いくら藤井様がセクハラまがい言動をしたからといって、あの態度はないだろう。あの後君の上司の嶋主任がどれほど苦労をされたのか理解できるだろう? 」と叱られていた。
聖美は客の藤井から接客態度が悪いのは美人な事を鼻にかけているのだといわれ、思わず口答えをしてしまったのだ。それがきっかけで騒動になった。
「確かに向こうも悪い点があったのは認めるよ。しかし、だからといって罵詈雑言の類を相手に浴びせるのはサービス業に従事するものとしては失格だ。
本当なら配置換えで在庫管理係りといった接客しなくてもよい部署に配属というところだが、もう少し売り場で努力してもらいたい。
そこでだ、君はガイノイド売り場担当とし、その販売促進活動要員としてしばらくサイバーテック社さんに協力してもらう」と店長がいったが、聖美は意味がわからなかった。
「君は、ボーナス商戦の間、機ぐるみに入ってもらう」といわれようやく意味がわかった。
自分はガイノイドスーツを着せられるということを。あの売り場で稼動しているガイノイドの多くは実際には人間が入っていることは店内ではよく知られていることであったが、当然客には内緒であり「中の人」などいないとされている。そのため機ぐるみを着れば赤松聖美なんていません。ということになる。
聖美はいやいやであったが、いまさら抗議しても機ぐるみ着用の決定が覆るとは思えなかったので、店長に促されるまま、人間を機械で覆う装着マシンのある地下六階に向かった。
しかたなく地下六階にある装着装置に向かった聖美であったが、不安半面少し嬉しかった。前から機ぐるみを着てみたかったからだ。人であって人ではない、機械であって機械ではない、という中途半端な存在になれるからだ。しかも機ぐるみを着てしまえば衣装を気にすることも化粧をすることも必要なくなるし、美人な今の自分を演じる必要もなくなるから、楽だと思ったのだ。
地下にはサイバーテックから派遣されたガイノイド技士の野間美玖がいた。本来は「ジャイアント・カメラ」で販売されたガイノイドやアンドロイドを点検するのが仕事だが、人間を機ぐるみの中に閉じ込める作業も請け負っている。
「おやおや、あなたがローズマリーになるの? 少しおしいような気がするけど頑張ってちょうだい」と野間が言った。なんでもローズマリーというガイノイドは受注生産を歌っているが、実際は量産型で外見よりも機能重視なので女性らしさを感じないただ大きな機械だという。また、ほかの店では男性が入っているケースもあるという。
その話を聞いて聖美は少しがっかりした。サイバーテックのブースにあるエリカを思い浮かべていたからだ。あの機体は胸もあり腰も引き締まったスレンダーなボディで、女の自分が見てもあんな体型に憧れてしまうほどであった。
しかし、聖美が着用する機ぐるみの写真にあるローズマリーは大量生産された人形といっても過言ではない平凡な外観だった。頭部は全体的につるつるした感じで、顔面には二つの丸いレンズとセンサー光が発光している。ボディも申し訳ない程度の胸があることを除けば、大昔のブリキのおもちゃといってもいいぐらいの平坦なイメージを受けるものであった。
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