バイト先で機ぐるみ姿になったばっかりに

ジャン・幸田

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(二)無断生産されたバトルスーツ

14.不採用モデル

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 サイバーテックの試作モデルが自衛隊に不採用になったのは、政治力と営業力に他社よりも劣っていた事もあったが、高性能であったけど見積価格が高すぎるというものだった。もっとも、実際は江藤社長が戦術軍事用パワードスーツの開発に乗り気でなかったのが理由だった。

 だから、技術習得のために参加したという側面が強く、不採用になるのを見越したような取り組みだった。それもこれも江藤社長がただの戦争の道具に成り下がるパワードスーツを見たくなかったこともあった。

 それでライバルメーカーのモデルが採用されたが、そちらはサイバーテックの技術力に完全に劣っているうえ、見積もりも甘かったので結果として追加予算を要求して防衛省と揉めていた。

 その試作モデルは男性用と女性用が五体ずつ製造されたが、二体ずつが性能評価のために自衛隊に納入されたほかは、三体とも他の耐久テストに供され跡形もなくなった・・・はずだった。

 「榊原常務の指示で、解体された女性用試作機が新製品のエリカの外装と引っ付けたというわけなのか君!」

 江藤社長はものすごい剣幕で製造担当者を叱責していた。話に寄れば廃棄直前のソフトウェアと内部装備品を取り出して家庭用ガイノイドに組み込んだというものだった。

 「いったいどういうことか、それは! たしかにあの試作機は高性能を目指しすぎ・・・ちょっとまてよ、榊原常務はどう指示したのか」

 「へえ、わたしの部署では社長の指示と聞いていまして。それで組み立てラインにとりあえず三体分を投入して完成させたのですが・・・」

 製造ラインの責任者は電話でそう報告していた。どうも榊原がなんらかの意図を持って不採用モデルを使用可能な状態にしたようだった。

 「それじゃあ、榊原常務が無断でやったわけか? ところで二体は誤って出庫したそうだが、もう一体はどうしたんだ、君!」
 江藤社長は今度は在庫管理社員に問いただした。

 「はい二体は先に発送いたしました。一体は大阪、もう一体は東京に発送いたしましたが、もう一体は榊原常務が昨夜持ち出しましたよ。
 それと廃棄予定の試作機のソフトウェアも一緒です。社長の意向を伝えようとして連絡を取ってみましたが、音信不通です」

 どうも榊原常務は何者かと結託して不採用モデルを何かに使おうとしているのは明白だった。しかし、その目的は見えなかった・・・

 「ちょっとまて、たしか榊原常務は最近防衛省職員と頻繁に会っていたよな、一応営業活動だといってはいてが、その防衛省職員は一体誰か調べてくれないか」
 
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