元ホームレス・タクヤとネコ耳娘アサミ魔道伝:Re

ジャン・幸田

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第一章:気が付いたらネコになっていたアサミ

004.再会

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 アサミがタクヤを求め放浪をはじめる少し前、タクヤは突然クビになるとともに住まいを同時に失ってしまった。そうなったのは派遣先の工場が突然経営破綻し、その系列だった派遣会社も運命を共にしてしまったためであった。

 タクヤら派遣社員全員が突然放り出されてしまった。仲間の多くは親戚を頼ったり行政の緊急対策などによって救済されたが、俺は頼るべき家族もいなかったし、住民票を移すのを忘れていたので、いづれの方法もとれず本当に路頭を迷う破目になってしまった。

 貯金はわずかしかなかったうえ、クビになったショックのためか病気が再発し動くのもままならない状況に陥ってしまった。アパートを借りたりネットカフェに泊まる金すら事欠いたタクヤは、ガード下に寝泊りするようになってしまった。そうホームレスになってしまったのだ。

 このガード下には俺のような境遇の失業者が数多く集まっており、中には夫婦でホームレスになっているような人もいた。その中でも俺は比較的年齢が若かったが、それでも働く事が出来ないから、文字通り何も出来ず段ボールと毛布に包まって、じっとするしかなかった。

 動くのもやっとのタクヤが出来る事は僅かなことしかなかった。その出来る事といえば食料の確保だった。僅かな貯金から下ろした小銭を持って閉店間際のスーパーに行って、半額値引きされた定価298円の弁当を買って、公園のトイレで拾ってきたペットボトルに汲んできた水で、遅い晩御飯を用意してきた。これがその日唯一の食事だった。

 この頃、世間では国際的経済恐慌と某アジアの軍事独裁政権の崩壊といった激動とともに、グロヴァル・コスモリアンと自称していた国際的テロリストが突如自滅したという報道でもちきりだったようだが、このガード下の最下層の人々にとって関係ないことであった。とりあえず明日の朝が迎えられるかどうかすらわからなかったからだ。

  そんなわびしい食事をしていると、若いときに結婚しておけばよかったのにと、後悔していた。たとえ失業しても彼女のためにもう一度起き上がろうという気概が起きていたかもしれないとおもったからだ。だが、もう遅すぎるのかもしれなかった。こんな貧した中年ホームレスが女性と結ばれるなんて未来を想像できなかったのだ。四十を過ぎてここまで落ちぶれた自分の事が情けなかった。

 そんな荒んだ気持ちでタクヤ箸を持っていると、目の前に汚れきっていたが見覚えあるミケネコがどこからともなく歩いてきた。いつも昼休憩のときにノミ取りをしたりご飯をやって可愛がっていたアサミと名づけたネコだった!

  「アサミ! お前どうしてここに!」思わず俺はアサミを抱き上げていた。それに反応するかのようにアサミもうっとりとした顔をしていた。でもアサミは弁当の中にあったチクワに手をかけようとしていた。

  「なんだお前も腹をすかしているのかよ! まあ、今日のところは再会記念としてお前にくれてやるぞ」そういって俺がチクワを手に乗せアサミの口元にやった。

  「なんだ、すぐペロリかよ? でも俺を追いかけてきた女はネコのお前が初めてって事かよ!」でもアサミの顔を見ていると、あの女子高生の亜佐美の顔が浮かんできた。そして涙も目に浮かんでいた。

 「そうだ、お前別嬪ネコなんだから俺と一緒に暮らそう!」
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