2 / 13
一日目
プールで展示されて
しおりを挟む
わたしの身体は重たかった。わたしが、このような状況に陥る前のことを思い出そうとしたけど何も思い出せなかった。様々な光景が脳裏に浮かぶけど、それが何を意味するのかがわからないのだ。だから人間だったとわかってもどんな人間だったのかわからなかった。
その脳裏に浮かんだ光景では、わたしの手は細く綺麗で華奢な体つきの髪が長い若い女のように思えた。ただ学生なのか、社会人なのか、美人なのか、不細工なのか、そういった事は全くわからなかった。
それと、どうもワニのなかでわたしは裸でいるような感覚だった。しかも口や鼻、下腹部にチューブのようなものを差し込まれ、目には大きな何かが貼り付けられ、耳栓をされているようだった。なぜワニの中で裸になっているのだろうわたしは?
でも確認しようとしても首は固定されているし、肘や膝、腰は何かの器具に押し込まれて固定されているのだけはわかった。その時、ある言葉が浮かんだ。わたしは”着ぐるみ”のなかにいるのだと。
しかし、それは確かめることが出来なかった。手も足もがっちりと固定されていて、前後にしか進むことは出来ない! そう思った瞬間、わたしの身体は水中にあった。プールに落ちてしまったのだ。どうにかしないといけないと思ったが、足いや後ろ足が水底についてわたしの身体は浮いたようだった。
そのとき、またあの声が聞こえた。そのままの姿勢でいろと。わたしの目には水面からの光景が見えた。どうもワニとしての目は水面から少し浮いているようで、その先には多くの観客がいるのが確認できた。どうやらここは本当に動物園のようだった。
観客の多くは子供連れの家族で、みんな笑顔だった。わたしを見て感激しているのだろうか? 哀れな女が閉じ込められた姿が受けているようだ! そのとき、なぜか耳元に動物園の飼育員と観客の声が聞こえてきた。
「このイリエワニのメイですが、一週間ぶりの公開なんですよ。しばらく調子が悪かったんです。
どうですか、ワニの水中の姿。当園自慢のこの展示室ではプールを横から見ることが出来るので、ワニが水中にいるときの様子が観察できます」
「ワニって丸太のように水面に浮かんでいると思っていたのですが、こんな風に頭を水面に浮かべて後ろ足は水底についているのが本当なんですね」
「ええ、野生では絶対見れない光景ですよ。ああやって獲物を待ち受けているのですよ。ほら、川を渡る水牛を襲ったりする場面をテレビで見たことございませんか?」
そのとき、わたしの身体は「二足歩行」していた時のように「大の字」に浮かんでいるようだった。この状態が本当のわたしの身体の姿勢に近いはずだ! そう、わたしは人間なのだ!
この時、わたしはある光景が脳裏に浮かんだ。大きなワニが頭を水面に浮かべて「大の字」で水中でダラーンとしているのところを。しかもわたしは人間の服を着て歓声をあげていた。
このとき、その回想シーンは恐ろしい事だと気付いた。わたしは人間だったときには、プールの向こう側にいたんだ! わたしは人間だったときにここにワニを見に来た事あったんだ!
わたしは恥ずかしくって仕方なかった。観客にはわたしのお腹が丸見えなんだと! しかし向こうにはただのワニにしか見えないだろうけど! そう思っているとあの声が聞こえてきた。お前、ワニらしく浮いていてよく出来ているぞ、そのままワニらしく浮いておくんだと。
わたしは、その声に反論したかった。わたしは人間なんだぞ! なんでワニの中に閉じ込めているんだと! しかし、声にする事は出来ないし、ワニらしい行動以外のことは全く出来なかった。あとで判った事だけど、周囲の人間にもわたしの意志は伝わらないのだと。しゃべれないからだ!
わたしは、それから長い時間水中にいた。この姿勢が人間だったと認識できて嬉しかったからだ。しかし、ここから出ることも出来ないし誰にも人間だと気付いて
くれるはずはなかった。それを思うと絶望感しかなかった。
その脳裏に浮かんだ光景では、わたしの手は細く綺麗で華奢な体つきの髪が長い若い女のように思えた。ただ学生なのか、社会人なのか、美人なのか、不細工なのか、そういった事は全くわからなかった。
それと、どうもワニのなかでわたしは裸でいるような感覚だった。しかも口や鼻、下腹部にチューブのようなものを差し込まれ、目には大きな何かが貼り付けられ、耳栓をされているようだった。なぜワニの中で裸になっているのだろうわたしは?
でも確認しようとしても首は固定されているし、肘や膝、腰は何かの器具に押し込まれて固定されているのだけはわかった。その時、ある言葉が浮かんだ。わたしは”着ぐるみ”のなかにいるのだと。
しかし、それは確かめることが出来なかった。手も足もがっちりと固定されていて、前後にしか進むことは出来ない! そう思った瞬間、わたしの身体は水中にあった。プールに落ちてしまったのだ。どうにかしないといけないと思ったが、足いや後ろ足が水底についてわたしの身体は浮いたようだった。
そのとき、またあの声が聞こえた。そのままの姿勢でいろと。わたしの目には水面からの光景が見えた。どうもワニとしての目は水面から少し浮いているようで、その先には多くの観客がいるのが確認できた。どうやらここは本当に動物園のようだった。
観客の多くは子供連れの家族で、みんな笑顔だった。わたしを見て感激しているのだろうか? 哀れな女が閉じ込められた姿が受けているようだ! そのとき、なぜか耳元に動物園の飼育員と観客の声が聞こえてきた。
「このイリエワニのメイですが、一週間ぶりの公開なんですよ。しばらく調子が悪かったんです。
どうですか、ワニの水中の姿。当園自慢のこの展示室ではプールを横から見ることが出来るので、ワニが水中にいるときの様子が観察できます」
「ワニって丸太のように水面に浮かんでいると思っていたのですが、こんな風に頭を水面に浮かべて後ろ足は水底についているのが本当なんですね」
「ええ、野生では絶対見れない光景ですよ。ああやって獲物を待ち受けているのですよ。ほら、川を渡る水牛を襲ったりする場面をテレビで見たことございませんか?」
そのとき、わたしの身体は「二足歩行」していた時のように「大の字」に浮かんでいるようだった。この状態が本当のわたしの身体の姿勢に近いはずだ! そう、わたしは人間なのだ!
この時、わたしはある光景が脳裏に浮かんだ。大きなワニが頭を水面に浮かべて「大の字」で水中でダラーンとしているのところを。しかもわたしは人間の服を着て歓声をあげていた。
このとき、その回想シーンは恐ろしい事だと気付いた。わたしは人間だったときには、プールの向こう側にいたんだ! わたしは人間だったときにここにワニを見に来た事あったんだ!
わたしは恥ずかしくって仕方なかった。観客にはわたしのお腹が丸見えなんだと! しかし向こうにはただのワニにしか見えないだろうけど! そう思っているとあの声が聞こえてきた。お前、ワニらしく浮いていてよく出来ているぞ、そのままワニらしく浮いておくんだと。
わたしは、その声に反論したかった。わたしは人間なんだぞ! なんでワニの中に閉じ込めているんだと! しかし、声にする事は出来ないし、ワニらしい行動以外のことは全く出来なかった。あとで判った事だけど、周囲の人間にもわたしの意志は伝わらないのだと。しゃべれないからだ!
わたしは、それから長い時間水中にいた。この姿勢が人間だったと認識できて嬉しかったからだ。しかし、ここから出ることも出来ないし誰にも人間だと気付いて
くれるはずはなかった。それを思うと絶望感しかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる