社畜少年の異世界交流記

一樹

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16歳の異世界転移

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「あ、わかった!!
 アキラさんって、ウィルさんに似てるんだ!」

 仕事関係で知り合った龍神族なる種族の少年、レーズィリスト――リストさんがクレープ片手にそんなことを言ってきた。
 リストさんは、茶色い髪に同系色の瞳、頭には牛のような角が生えている十歳ほどの子供の外見をしている。
 実年齢はともかく、彼の場合、外見は中身とイコールらしい。
 ここはミルさんとは違うところだ。
 それにしても、誰だ、ウィルって??

「次代魔王と言われている、今代魔王の末の息子さんですよ」

「末っ子?」

 跡を継ぐ、というのであれば長子だろうに。
 俺の疑問は顔にそのまま出ていたらしく、リストさんが説明してくれた。
 それによると、なんでも魔王というのは血統ではなく実力で決まるんだとか。
 そういう意味では、その末っ子ウィルことウィリアム氏は能力的にとても優秀らしい。

「たまに僕たちの現場に駆り出されてダンジョンボスをやったりしてますね」

「偶に?」

「えぇ」

 アルバイトという事だろうか?
 いや、末っ子といっても今はもうちゃんとした大人で、もしかしたら働きつつ実家の仕事を時々手伝っているとかそういうことかな。
 なんて思っていたら、リストさんがまるで俺の頭の中を読んだかのように説明してくれた。

「彼、気難しい性質らしくて。
 人間換算だと、ちょうどアキラさんと同い年くらいの十六歳になるんですけど。
 学校には顔を出さず、ずーっと部屋に籠ってゲームをしてるらしいです」

 ただの引きこもりだった。

「この前、実況動画が投稿されてました」

 しかも、うp主、いや動画投稿者だった。
 それも実況動画とはマニアックな。

「投稿された動画を見る感じだと、そんな風に感じないんですけどね」

 知り合いだからだろうか。
 リストさんの口ぶりからすると、なんと言うのだろう?
 こう、そのウィル氏に対してネガティブな感情というよりは、不思議で仕方ない、とでも言いたげだった。
 まぁ、よくある事だ。
 プライベートだと別人だろ、みたいになる人は珍しくない。
 しかし、

「それって、俺も気難しい引きこもりに見えるってことですか?」

「え、あっ!
 すみません、そういうつもりじゃ。
 ただ、なんて言うのか。
 雰囲気が似てるんですよ。
 ふんわりと、ですけど」

「はぁ」

 知らない人の話題を出されても微妙な反応しか返せない。

「あとウィルさんには婚約者がいます」

 その情報を俺に教えてどうしたいのだろう?

「婚約者、ですか」

 すごいなぁ。
 こんなに現代的なのに、十代半ばで将来を約束した相手がいるとか。

「公爵家のお嬢様、リリス・アルストロメリアさんって方なんですけどね」

 たまらず、俺は口を挟んだ。

「あの、その情報をなぜ俺に??」

 リストさんはきょとんと俺を見つめ返してくる。
 そして、答えた。

「いえ、この前アキラさんと一緒に仕事をした時に、ちょっと話しをしたじゃないですか」

 雑談のことだろう。

「何か理由があったんだとは思いますが、話していて気づいたんです。
 アキラさん、研修受けてないなって。
 一人でも複数でも研修を受けると、色んな人から多種多様な話を聞けるでしょう?
 でも、アキラさんはその工程をすっ飛ばしてるわけで。
 だから、もしかしたらウィルさんとはこれから仕事するかもだし、教えておこうかなって考えまして。
 他の人ならまだしも、ウィルさんのことは知ってて損はないと思いますし。
 ミル様がもしかしたらその時に説明するのかもしれませんけど、まぁ、念の為ってやつです」

 この小さな先輩は気を利かせてくれたらしい。
 しかし、ミルさんのことを様付けとは。
 ミルさんって、もしかしなくても物凄く偉い人なのだろうか??

 さて、そんなやり取りがあった数日後のことだ。
 そのウィル氏と組んで仕事をすることになった。
 今回はミルさんも一緒である。
 また、役を演じるのかなと思いきや、違うらしい。
 しかし、詳しい説明はまだだったなぜなら。

「こないですね」

 俺はぽつりと呟いた。
 そのウィル氏が集合時間になっても、待ち合わせの場所に現れなかったのである。
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