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最寄りのバス停まで自転車で15分。
そこから、バスに乗り揺られること約40分。
山の中に、その県立高校はあった。
新太が通う高校である。
ちなみに、剣道と柔道が強い高校として知られていた。
「よく車酔いしないな」
隣に座った兄が言ってくる。
新太は読み進めていた文庫本から視線は外さずに、答えた。
「スマホでゲームしてる人もいるし、それこそ漫画読んでる人だって、SNSをチェックしてる人だっているよ。
珍しいことでもないでしょ」
「……まぁ、そうだけど」
「兄貴はこういうの弱いもんなぁ」
新太の1つ違いの兄は、車の中で読書も出来なければ動画を見ることも出来なかった。
酔うからだ。
「それはそうと、ゲームにハマったのか?
昨日もログインしてただろ?」
「んー、まぁ、ハマったって言えばハマったけど。
そこまでじゃないよ」
「そうなのか?
お前が読書そっちのけでゲームしてたから、かなりハマったのかと思ったぞ。
先週の火曜日も日付が変わるまでやってただろ」
月のクエストの時のことだ。
「あれは、ちょっとゲーム内で色々あったんだよ。
あ、トラブルじゃないから。
昨日は、ゲーム内で知り合った人とミニイベントに参加したんだ」
「ミニイベント?」
「そう、あちこちにあるコインを集めて、規定枚数になったら景品が貰えるミニゲームイベントがあったんだ。
ゲーム内で知り合ったプレイヤーさんの手伝いみたいな形で参加した。
普通に面白かったよ」
「ふぅん?」
まさか、ハイレベルプレイヤーと組んで、騙し討ちを決行し、他のハイレベルプレイヤー狩りをしていたとは想像できず、兄は相槌を打つだけであった。
読んでいた作品の場面がちょうどよく区切れたので、そこで新太は顔を上げた。
最初に視界に入って来たのは、同じ高校の制服を着た女子生徒達だ。
おそらく途中で乗車してきたのだろう。
女子生徒達の視線が、新太の座っている席に向けられている。
彼女たちの瞳に映っているのは、新太では無い。
兄だ。
新太の兄、颯汰は文武両道、顔立ちも整っているので女子生徒から人気がある。
小、中と何度も告白されてきた。
なんなら、これだけSNSやらメッセージアプリが大量にリリースされている時代だというのに、兄へのラブレターを預かることもしばしばだった。
それこそ、取り次ぎを頼まれたことも両手両足の指の数では足りないほどである。
ちなみに、弟も女子に人気である。
人気が皆無なのは、新太くらいだ。
なにしろ、彼だけが兄弟の仲でインドア派で、口数も少ない上、ずっと暇さえあれば本を読んでいるのだ。
他の生徒からしたら、話しかけたくても話しかけづらいのだろう。
新太自身は、そんなことを気にしたことは一度もない。
気にしている暇があれば、積読消化につとめているからだ。
そうこうしていると、校門前のバス停に着いた。
続々と生徒たちがバスから吐き出されていく。
新太も兄と一緒にバスを降りた。
すると、一人の女子生徒が二人に近づいてきて声をかけた。
「おはよう、荒木君。
それに、弟君も」
それは兄、颯汰の同級生の女子生徒だった。
名前は鳥越える。
こちらも文武両道の美少女だ。
兄と並ぶと、一枚の絵画のように見える。
(これが俗に言う映えるってやつかぁ)
高校内では有名人の二人だ。
しかも美男美女の組み合わせである。
目立たない方がおかしいのだ。
「おはようございます」
新太はローテンションで挨拶を返す。
それから二人と別れて、生徒玄関へ向かった。
あの二人とは学年が違うので、教室も違うからだ。
靴を履き替え、教室へ。
教室はいつも通りざわめいていた。
その生徒たちの中を通り過ぎ、自分の席へ腰を下ろす。
それからまた文庫本を取り出して開いた。
文庫本を読み進めていく彼の耳に、他の生徒たちの雑談が聴こえてくる。
「【EEO】にやべぇプレイヤーが出たって聞いたか?」
「知ってる!
あれだろ?
昨日のミニイベントで、トップファイブのロロピカルとエトルリヤがやられたってヤツ!!」
「それそれ!」
「トップファイブって、【EEO】内のトッププレイヤー中でも特に強い人達でしょ?
そんな人達でもやられちゃうんだね」
「めっちゃ強いプレイヤーなんだろうなぁ」
「だと思うぞ。
わざわざハイレベルプレイヤー達を狙ってPKしてたって話だからさ。
しかも三人パーティだったって話だし」
そんな会話が届いて、新太は思った。
(そんな怖い人達がいたんだ。
良かったぁ、かち合わなくて)
【✝漆黒の堕天使✝】みたいなことをするプレイヤーが他にもいたことに、少し驚きつつも新太は文庫本のページをめくるのだった。
一方、その頃。
颯汰とえるは、教室に向かいながらこんな会話を交わしていた。
「へぇ、弟君、ゲーム始めたんだ!
それも【EEO】をね。
うちの妹もやってるよ、結構強いみたい」
「そうなのか。
じゃあ、もしかしたらゲーム内ですれ違うくらいしてるかもなぁ」
「かもねぇ。
昨日は、なんか珍しく負けたみたいで荒れてたよ。
負けず嫌いなんだよね、うちの妹。
負けた直後、ものすごく悔しがってたよ」
そこから、バスに乗り揺られること約40分。
山の中に、その県立高校はあった。
新太が通う高校である。
ちなみに、剣道と柔道が強い高校として知られていた。
「よく車酔いしないな」
隣に座った兄が言ってくる。
新太は読み進めていた文庫本から視線は外さずに、答えた。
「スマホでゲームしてる人もいるし、それこそ漫画読んでる人だって、SNSをチェックしてる人だっているよ。
珍しいことでもないでしょ」
「……まぁ、そうだけど」
「兄貴はこういうの弱いもんなぁ」
新太の1つ違いの兄は、車の中で読書も出来なければ動画を見ることも出来なかった。
酔うからだ。
「それはそうと、ゲームにハマったのか?
昨日もログインしてただろ?」
「んー、まぁ、ハマったって言えばハマったけど。
そこまでじゃないよ」
「そうなのか?
お前が読書そっちのけでゲームしてたから、かなりハマったのかと思ったぞ。
先週の火曜日も日付が変わるまでやってただろ」
月のクエストの時のことだ。
「あれは、ちょっとゲーム内で色々あったんだよ。
あ、トラブルじゃないから。
昨日は、ゲーム内で知り合った人とミニイベントに参加したんだ」
「ミニイベント?」
「そう、あちこちにあるコインを集めて、規定枚数になったら景品が貰えるミニゲームイベントがあったんだ。
ゲーム内で知り合ったプレイヤーさんの手伝いみたいな形で参加した。
普通に面白かったよ」
「ふぅん?」
まさか、ハイレベルプレイヤーと組んで、騙し討ちを決行し、他のハイレベルプレイヤー狩りをしていたとは想像できず、兄は相槌を打つだけであった。
読んでいた作品の場面がちょうどよく区切れたので、そこで新太は顔を上げた。
最初に視界に入って来たのは、同じ高校の制服を着た女子生徒達だ。
おそらく途中で乗車してきたのだろう。
女子生徒達の視線が、新太の座っている席に向けられている。
彼女たちの瞳に映っているのは、新太では無い。
兄だ。
新太の兄、颯汰は文武両道、顔立ちも整っているので女子生徒から人気がある。
小、中と何度も告白されてきた。
なんなら、これだけSNSやらメッセージアプリが大量にリリースされている時代だというのに、兄へのラブレターを預かることもしばしばだった。
それこそ、取り次ぎを頼まれたことも両手両足の指の数では足りないほどである。
ちなみに、弟も女子に人気である。
人気が皆無なのは、新太くらいだ。
なにしろ、彼だけが兄弟の仲でインドア派で、口数も少ない上、ずっと暇さえあれば本を読んでいるのだ。
他の生徒からしたら、話しかけたくても話しかけづらいのだろう。
新太自身は、そんなことを気にしたことは一度もない。
気にしている暇があれば、積読消化につとめているからだ。
そうこうしていると、校門前のバス停に着いた。
続々と生徒たちがバスから吐き出されていく。
新太も兄と一緒にバスを降りた。
すると、一人の女子生徒が二人に近づいてきて声をかけた。
「おはよう、荒木君。
それに、弟君も」
それは兄、颯汰の同級生の女子生徒だった。
名前は鳥越える。
こちらも文武両道の美少女だ。
兄と並ぶと、一枚の絵画のように見える。
(これが俗に言う映えるってやつかぁ)
高校内では有名人の二人だ。
しかも美男美女の組み合わせである。
目立たない方がおかしいのだ。
「おはようございます」
新太はローテンションで挨拶を返す。
それから二人と別れて、生徒玄関へ向かった。
あの二人とは学年が違うので、教室も違うからだ。
靴を履き替え、教室へ。
教室はいつも通りざわめいていた。
その生徒たちの中を通り過ぎ、自分の席へ腰を下ろす。
それからまた文庫本を取り出して開いた。
文庫本を読み進めていく彼の耳に、他の生徒たちの雑談が聴こえてくる。
「【EEO】にやべぇプレイヤーが出たって聞いたか?」
「知ってる!
あれだろ?
昨日のミニイベントで、トップファイブのロロピカルとエトルリヤがやられたってヤツ!!」
「それそれ!」
「トップファイブって、【EEO】内のトッププレイヤー中でも特に強い人達でしょ?
そんな人達でもやられちゃうんだね」
「めっちゃ強いプレイヤーなんだろうなぁ」
「だと思うぞ。
わざわざハイレベルプレイヤー達を狙ってPKしてたって話だからさ。
しかも三人パーティだったって話だし」
そんな会話が届いて、新太は思った。
(そんな怖い人達がいたんだ。
良かったぁ、かち合わなくて)
【✝漆黒の堕天使✝】みたいなことをするプレイヤーが他にもいたことに、少し驚きつつも新太は文庫本のページをめくるのだった。
一方、その頃。
颯汰とえるは、教室に向かいながらこんな会話を交わしていた。
「へぇ、弟君、ゲーム始めたんだ!
それも【EEO】をね。
うちの妹もやってるよ、結構強いみたい」
「そうなのか。
じゃあ、もしかしたらゲーム内ですれ違うくらいしてるかもなぁ」
「かもねぇ。
昨日は、なんか珍しく負けたみたいで荒れてたよ。
負けず嫌いなんだよね、うちの妹。
負けた直後、ものすごく悔しがってたよ」
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