14 / 50
14
しおりを挟む
「なら、実験してみようよ。
いや、この場合は検証だけど」
前回のドライブから、さらに数日後の休日。
上の妹のマリーがそう提案してきた。
「検証って、【言霊使い】の?」
「そうそう。あと【魔物使い】の方も。どうせ暇だし」
「そりゃ、あんたはね」
「それに、次の休みにその定期勉強会行くんなら、どの程度言霊が使えるのか調べておいた方が講師の人に相談しやすいでしょ」
そう、そうなのだ。
国、というかお役所に鑑定結果を伝えたところ、次の日には定期講習会、つまりは勉強会の案内が届いたのだ。
場所は、電車で二時間かかる県庁所在地がある市だ。
ちなみに最寄り駅まで自転車で四十分かかる。
あー。ダルいわ。
「そうだけど」
まあ、ダルいとは別に今現在、あたしは妹の提案した検証には全く乗り気では無かった。
「なに、なにか問題でもあるの?」
妹もあたしが乗り気でないのに気づいたのか、首を傾げている。
「見て分からない?
これからラスボス戦」
古いRPG、そのドット絵が特徴の画面を指さしながらあたしは言った。
検証よりも遊びである。
いざ、世界を救うぞ!
コントローラーを手に、イベントを発生させようとした時。
猫たちのフミフミタイムが終わったらしきタマが現れた。
飛び跳ねながら、やってきた。
そして、古いゲーム機に着地した。
このゲーム機が世間的に現役だった頃、猫や掃除機の襲撃によってフリーズするというハプニングがよく起こっていたという。
今、時代を超え、同じ悲劇があたしの目の前で繰り返された。
あたしは叫んだ。
「あたしの五時間がァァァあああ??!!」
あたしの叫びに、タマはきょとんとしている。
「セーブはこまめに、でしょ」
言われなくても分かってる。
あたしは、タマを怒ろうした。
でも、なにも分かってないのだろう。
タマはゲーム機から降りて、あたしの膝に飛び乗ってスリスリしてきた。
あぁもう、可愛いな畜生。
「タマ! めっ! これに乗ったらめっ!
わかった?」
「テュケるる?」
あたしはタマを持ち上げ、自分の目線に合わせる。
そして、怒ったのだが、タマは不思議そうに一声鳴いただけだった。
鑑定結果、何かの間違いじゃないかなぁ。
あの後、あたしなりに【言霊使い】について調べてみた。
と言っても、携帯端末でポチポチと文字を打ち込んだだけだったけど。
そうして、お狐様が言っていたことと、何故レアなのかということがわかった。
言霊、もしくは、言魂とも書く。
つまりは言葉に宿ると信じられていた、不可思議な力のことである。
言葉には力が宿る。
その宿った力を意図的に行使することができる存在を、言霊使いと言うらしい。
つまり、この論法で行くなら、あたしがタマを注意したのなら今後タマはゲーム機を襲撃したりしないわけだ。
だが、しかし、タマはあたしとゲーム機を交互に見て、何かを勘違いしたらしい。
あたしの手から自力で逃げ出すと、ゲーム機の上で飛び跳ねようとした。
だから、ダメだっていってんのに!!
「めっ!」
あたしはゲーム機にダメージが加わる前にタマを空中でとっ捕まえ、叱った。
あ、これアレだ。
こうすれば、あたしに構ってもらえると覚えた顔だ。
***
とりあえず、場所を変える。
公園なんて洒落たものは、この集落には無い。
なので、昔は火葬場、今は花畑、まぁ花の群生地になっている空き地にてマリーと一緒に検証を行うことにした。
ちなみに、周囲は田んぼか畑である。
人の姿は、ほぼ無い。
そう、だいたい二、三百メートル先に腰の曲がった他所の家の婆さんが作業をしているくらいだ。
除草剤撒いてる。
「で、どうやって検証するの?」
あたしは、言い出しっぺのマリーに訊く。
「んー、とりあえず蜻蛉の時みたいに、指立てて『とーまれ』ってしてみるとか?」
ふんわりざっくりしすぎである。
「そんなんで来たら世話ないと思うけど」
「まぁまぁ、物は試しってやつだよ」
ま、それも一理ある。
タマにはいつもの散歩のように紐を付けてあるので、それをマリーに渡す。
それからあたしは、子供の頃よくやっていたように利き手の人差し指をピンっと立てて、口を開いた。
「この指止まれ」
言いつつ、時期的にアゲハ蝶とか止まらないかなぁとか考える。
と、ヒラヒラとそれはどこからとも無く現れた。
黒くてヒラヒラと翔ぶそれは、今しがた止まればいいのになぁと想像したアゲハ蝶だった。
モンスターじゃなかった。
でも、
「マジか」
あたしが驚いてポツリと漏らす。
妹も、
「マジだよ、姉ちゃん」
目を丸くしてそう言った。
あー、マリーも話半分くらいしか期待してなかったんだな。
それであれだけ夢を見れるんだから、羨ましい限りだ。
いや、この場合は検証だけど」
前回のドライブから、さらに数日後の休日。
上の妹のマリーがそう提案してきた。
「検証って、【言霊使い】の?」
「そうそう。あと【魔物使い】の方も。どうせ暇だし」
「そりゃ、あんたはね」
「それに、次の休みにその定期勉強会行くんなら、どの程度言霊が使えるのか調べておいた方が講師の人に相談しやすいでしょ」
そう、そうなのだ。
国、というかお役所に鑑定結果を伝えたところ、次の日には定期講習会、つまりは勉強会の案内が届いたのだ。
場所は、電車で二時間かかる県庁所在地がある市だ。
ちなみに最寄り駅まで自転車で四十分かかる。
あー。ダルいわ。
「そうだけど」
まあ、ダルいとは別に今現在、あたしは妹の提案した検証には全く乗り気では無かった。
「なに、なにか問題でもあるの?」
妹もあたしが乗り気でないのに気づいたのか、首を傾げている。
「見て分からない?
これからラスボス戦」
古いRPG、そのドット絵が特徴の画面を指さしながらあたしは言った。
検証よりも遊びである。
いざ、世界を救うぞ!
コントローラーを手に、イベントを発生させようとした時。
猫たちのフミフミタイムが終わったらしきタマが現れた。
飛び跳ねながら、やってきた。
そして、古いゲーム機に着地した。
このゲーム機が世間的に現役だった頃、猫や掃除機の襲撃によってフリーズするというハプニングがよく起こっていたという。
今、時代を超え、同じ悲劇があたしの目の前で繰り返された。
あたしは叫んだ。
「あたしの五時間がァァァあああ??!!」
あたしの叫びに、タマはきょとんとしている。
「セーブはこまめに、でしょ」
言われなくても分かってる。
あたしは、タマを怒ろうした。
でも、なにも分かってないのだろう。
タマはゲーム機から降りて、あたしの膝に飛び乗ってスリスリしてきた。
あぁもう、可愛いな畜生。
「タマ! めっ! これに乗ったらめっ!
わかった?」
「テュケるる?」
あたしはタマを持ち上げ、自分の目線に合わせる。
そして、怒ったのだが、タマは不思議そうに一声鳴いただけだった。
鑑定結果、何かの間違いじゃないかなぁ。
あの後、あたしなりに【言霊使い】について調べてみた。
と言っても、携帯端末でポチポチと文字を打ち込んだだけだったけど。
そうして、お狐様が言っていたことと、何故レアなのかということがわかった。
言霊、もしくは、言魂とも書く。
つまりは言葉に宿ると信じられていた、不可思議な力のことである。
言葉には力が宿る。
その宿った力を意図的に行使することができる存在を、言霊使いと言うらしい。
つまり、この論法で行くなら、あたしがタマを注意したのなら今後タマはゲーム機を襲撃したりしないわけだ。
だが、しかし、タマはあたしとゲーム機を交互に見て、何かを勘違いしたらしい。
あたしの手から自力で逃げ出すと、ゲーム機の上で飛び跳ねようとした。
だから、ダメだっていってんのに!!
「めっ!」
あたしはゲーム機にダメージが加わる前にタマを空中でとっ捕まえ、叱った。
あ、これアレだ。
こうすれば、あたしに構ってもらえると覚えた顔だ。
***
とりあえず、場所を変える。
公園なんて洒落たものは、この集落には無い。
なので、昔は火葬場、今は花畑、まぁ花の群生地になっている空き地にてマリーと一緒に検証を行うことにした。
ちなみに、周囲は田んぼか畑である。
人の姿は、ほぼ無い。
そう、だいたい二、三百メートル先に腰の曲がった他所の家の婆さんが作業をしているくらいだ。
除草剤撒いてる。
「で、どうやって検証するの?」
あたしは、言い出しっぺのマリーに訊く。
「んー、とりあえず蜻蛉の時みたいに、指立てて『とーまれ』ってしてみるとか?」
ふんわりざっくりしすぎである。
「そんなんで来たら世話ないと思うけど」
「まぁまぁ、物は試しってやつだよ」
ま、それも一理ある。
タマにはいつもの散歩のように紐を付けてあるので、それをマリーに渡す。
それからあたしは、子供の頃よくやっていたように利き手の人差し指をピンっと立てて、口を開いた。
「この指止まれ」
言いつつ、時期的にアゲハ蝶とか止まらないかなぁとか考える。
と、ヒラヒラとそれはどこからとも無く現れた。
黒くてヒラヒラと翔ぶそれは、今しがた止まればいいのになぁと想像したアゲハ蝶だった。
モンスターじゃなかった。
でも、
「マジか」
あたしが驚いてポツリと漏らす。
妹も、
「マジだよ、姉ちゃん」
目を丸くしてそう言った。
あー、マリーも話半分くらいしか期待してなかったんだな。
それであれだけ夢を見れるんだから、羨ましい限りだ。
10
あなたにおすすめの小説
前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
忠犬ポチは、異世界でもお手伝いを頑張ります!
藤なごみ
ファンタジー
私はポチ。前世は豆柴の女の子。
前世でご主人様のりっちゃんを悪い大きな犬から守ったんだけど、その時に犬に噛まれて死んじゃったんだ。
でもとってもいい事をしたって言うから、神様が新しい世界で生まれ変わらせてくれるんだって。
新しい世界では、ポチは犬人間になっちゃって孤児院って所でみんなと一緒に暮らすんだけど、孤児院は将来の為にみんな色々なお手伝いをするんだって。
ポチ、色々な人のお手伝いをするのが大好きだから、頑張ってお手伝いをしてみんなの役に立つんだ。
りっちゃんに会えないのは寂しいけど、頑張って新しい世界でご主人様を見つけるよ。
……でも、いつかはりっちゃんに会いたいなあ。
※カクヨム様、アルファポリス様にも投稿しています
ゴミ鑑定だと追放された元研究者、神眼と植物知識で異世界最高の商会を立ち上げます
黒崎隼人
ファンタジー
元植物学の研究者、相川慧(あいかわ けい)が転生して得たのは【素材鑑定】スキル。――しかし、その効果は素材の名前しか分からず「ゴミ鑑定」と蔑まれる日々。所属ギルド「紅蓮の牙」では、ギルドマスターの息子・ダリオに無能と罵られ、ついには濡れ衣を着せられて追放されてしまう。
だが、それは全ての始まりだった! 誰にも理解されなかったゴミスキルは、慧の知識と経験によって【神眼鑑定】へと進化! それは、素材に隠された真の効果や、奇跡の組み合わせ(レシピ)すら見抜く超チートスキルだったのだ!
捨てられていたガラクタ素材から伝説級ポーションを錬金し、瞬く間に大金持ちに! 慕ってくれる仲間と大商会を立ち上げ、追放された男が、今、圧倒的な知識と生産力で成り上がる! 一方、慧を追い出した元ギルドは、偽物の薬草のせいで自滅の道をたどり……?
無能と蔑まれた生産職の、痛快無比なざまぁ&成り上がりファンタジー、ここに開幕!
1歳児天使の異世界生活!
春爛漫
ファンタジー
夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。
※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる