毛玉スライム飼ったらこうなる

一樹

文字の大きさ
41 / 50

41

しおりを挟む
 「おはようございます。今日は宜しくお願いします」

 現地にて。
 なっちゃんがそう挨拶をした。
 あたしもそれに倣って頭を下げる。
 鬱蒼とした木々が生い茂る山。
 そんな山を背に、腰の曲がったゴブリン族のおばあさんがニコニコと挨拶を返してきた。

 「はい、おはよう。
 今日はありがとうねぇ。
 まさかこんな可愛らしい娘さん達が来るなんてねぇ」

 のんびり言いつつ、おばあさんは挨拶と一緒にお礼も言ってくる。
 まだ早い気がするんだけどなあ。

 「へぇ、旦那さんのためなんですね」

 「えぇえぇ、そうなの~」

 山道を登りながら、あたし達に護衛依頼を出してきたおばあさんから聞いたところによると、毎年この時期に亡くなった旦那さんの遺影に、この山で採ってきた幸を天麩羅にしてお供えしているらしい。
 いつもなら猟友会の方に頼んで、猟手ハンターさんを手配してもらっているらしい。
 でも、今回は色々運が悪く誰も来られないとなり、猟友会から冒険者ギルドへ依頼の打診があったらしい。
 でも、なんであたし達?
 そう疑問も尽きなかった。
 ギルドの方もその辺は把握していなかったので、もし知りたいなら依頼主に確認してほしいと言われていた。
 なので、聞いてみた。

 「あなた達を選んだわけ?」

 腰が曲がりながらも、あと失礼かもしれないが細い小枝のようにすぐ折れてしまいそうな皮と骨ばかりの体にも関わらず、おばあさんは息をあがらせることなく、山道を悠々と歩いていく。
 このおばあさん、あたし達より体力あるな。
 そのおばあさんの先には、タマ達が遊びながら進んでいた。
 タマとツグミちゃんはじゃれ合いながら、ヒィはこちらを時々確認しつつ進んでいる。
 性格出るなぁ。

 「はい。自分で言うのもなんですけど、あたし達は結局学生ですし。
 なっちゃんなら名前も知られていますから、彼女だけ指名だったなら不思議でもなんでもなかったんですけど、なんであたしも指名だったのかなって」

 「えっとね。人から話を聞いてたのよ」

 「はい?」

 そこからの話を要約するとこういうことだった。
 この数ヶ月、なっちゃんと一緒に受けていた討伐依頼お仕事、その依頼主達伝手で、猟友会の方にあたし達の話が流れていたらしい。
 よく働く学生冒険者がいる。仕事も丁寧だし、なにかあったら頼むといいよ、と。
 猟友会と冒険者ギルドはそれぞれ別々の組織だし、場合によっては商売敵同士になったりもするが、大人の事情とかで別に表立って争うなんてことはなく、むしろ田舎では猟友会と冒険者ギルド、両方に登録している人も多いので持ちつ持たれつな関係だったりするらしい。
 帝都だとそういうわけにはいかないらしいが。
 まぁ、概ねこの町というか、この県ではこの二つの組織の仲は良好だった。
 そんな繋がりがあり、で、いろいろな事柄が積み重なってあたし達にお鉢が回ってきたらしい。
 いろいろな事柄というのは、まぁ、おばあさんが毎年依頼をしている猟師さんが、腰をやってしまったり、先述したように他の人が見つからなかったり、といったことだ。
 
 「自分もそうだけど、もう猟友会の知り合いも歳だからねぇ」

 少し寂しそうにおばあさんが言う。

 「そんなまだまだお若いですよ」

 「ココロの言う通りですよ。この山道を歩いてても足腰しっかりしてるし。
 正直、私たち必要なさそうですけど」

 おばあさんはニコニコしたまま、嬉しそうに返してくる。

 「あら、ありがとうねぇ。
 たしかに、あの人よりは全然若いからねぇ」

 直後、おばあさんはポロッと年齢を口にした。
 当たり前だが、ウチのばあちゃんより全然若かった。
 しかし、そうなってくると亡くなった旦那さんとは幾つ違いだったのか。

 「エルフと結婚したってことは、年の差婚だったんですか?」

 これは別に普通の質問だ。
 エルフ同士ならまだしも、異種族同士の結婚の場合、それも相手が長命あるいは短命の種族となれば、年の差婚がまぁ普通である。

 「そうなの。それでも五十年は連れ添ったの。
 二十歳の頃からだからねぇ。随分長かったけど。
 まぁ、あの人からすれば数年感覚だったと思うけど。
 こっちは初婚、向こうは何回か結婚歴があったからいつでもリードされてたっけね」

 え、それって。
 あたしは思わず聞いてみた。

 「旦那さんからすると、最後の相手だったんですか?」

 「まーねぇ。こっちも貰い手が無くて向こうは看取る相手を探してたってことで利害が一致して」

 読者諸君。
 気づいただろうか?
 そう、このおばあさんと亡くなった旦那さんの結婚は、決して恋愛結婚なんかでは無かったのだ。
 なんのこっちゃ、という人のために一応説明するが。
 生々しい話になるが、これは、つまり介護等、旦那さんが自分の面倒を見させるために若い娘を嫁にしたということだ。
 そして、おばあさんが言った貰い手が無くて、という言葉。
 ゴブリンの寿命は、人間と同じか少し短いくらいが平均的だ。
 おばあさんの外見から判断するに、八十歳前後か。
 二十歳から七十歳までの五十年連れ添ったのだから、人生をその旦那さんの介護のために消費したと言っても良いだろう。
 時代もあったんだと思う。
 未だに女は嫁いで、結婚してなんぼ。
 そして、子供を産んで育てて、嫁ぎ先の家に、旦那に尽くす。そうすれば、それだけで幸せだ、という考えがある程だ。
 もちろん、現代ではそれをしないという選択肢だって認められつつある。

 だけれど、その考えが普通だとして言い聞かされ育ってきた世代は違う。
 ましてや、おばあさんが若い頃なんてそれが普通のだったはずだ。

 あたしが余程変な顔をしていたのか、それで察したようで。

 「たしかに利害が一致しての結婚だったけれど、でもそこそこ楽しい時間だった」
 
 そうおばあさんは言った。
 続いて、子宝にも恵まれたしね、とも。
 人の幸せはそれぞれ、ということだろうか。
 子供を作ったのであれば、ただの介護要因というわけでもなかったのだろう。

 ちなみに、ウチのばあちゃんとじいちゃんは恋愛結婚らしい。
 詳しくは知らない。
 ばあちゃんの方が数百年単位で年上なので、姉さん女房だ。
 決してばあちゃんがショタコンというわけではない。
 同じように、このゴブリンおばあさんの亡くなった旦那さんがロリコンというわけでもない。
 これ、一般のヒトは勘違いしてるから念の為。
 あと、エルフもそうだが、長命短命種族の夫婦や恋人の組み合わせを、ロリだのショタだの児童婚だのと言ってからかうのは常識を疑われるので、やめた方がいい。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

処理中です...