復讐遊戯～太陽に捧げる鎮魂歌～

一樹

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復讐遊戯　４

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　どうやら気絶していたらしい。
　しばらくぼんやりと見覚えのない天井を見つめていると、記憶が甦ってくる。
　抱かれる、なんてものじゃない。ただの暴力のそれ。
　
　「なんで、こんなことに」

　あられもない姿で、散々男達に犯された彼女は床に転がされたまま、そんな事を呟いた。
　
　『あぁ、起きましたか。
何故、か。私は先ほど言いましたよ？
あえて説明するなら、貴女が嵌めて虐め、自殺に追い込んだ少女と同じ事を体験してほしかっただけです。
でも、貴女はまだ幸せですよね？
だって好意を持っていた男性達にされたんですから。
嬉しかったでしょう？
こんなに愛されて。欲を受け入れて感動でしょう？？』

　女性の言葉に、アクアは内心でそんなことないと呟く。
　そんなことない。
　こんなこと嫌に決まっている。
　
　「もう、いや。死にたい」

　『あら、良いんですか？
まだ希望は残されてるのに』

　声は希望をチラつかせる。
　慌てた様子はない。ただ事実を告げる。

　『生き残る事ができれば、新しい人生が待っているのに？
貴女が眠っている間に男性達が本当に賞金が出るのか疑ったので、改めて説明し、その一部をお見せしました。こちらです』

　天井が動いて、穴が開く。
　そこから、何かがふよふよと宙を舞いながらやがてアクアのお腹の上に落ちついた。
　それは、小さな金の板だった。

　『間違っても盗もうなどと思わないでください。その意志さえなければ触れても大丈夫ですよ』

　紛れもない金だ。感触は冷たい。

　『あぁ、男性達は最後までゲームに参加することを決めました。
貴女は、どうしますか？
ここで脱落しても、貴女が死ぬだけ。彼らは死にません。最後の一人になるまで、死にません。
ここで死にますか？
それともゲームを続けますか？』

　また選択だった。
　どこまでも、アクアにとって都合の悪い選択だ。
　さきほどは、男達がアクアを犯せば生き残れるという答えが用意されていた。
　今は、アクアが脱落して死んでも、男達は痛くも痒くもない、それどころかゲームに勝てばその後の人生が待っているという希望があるという事実が提示されている。
　なんだ、これ？
　なんで、私だけこんな目にあわなければいけない？
　そんな独りよがりな怒りが沸き上がる。
　私だけが不幸になるなんて許せない。
　男達は痛くもなく、ただ腰を振って気持ちよくなっただけじゃないか、と。
　そんな事は許されないだろう。
　だって、悪役令嬢のリリーに直接手を下したのは彼らなのに。
　アクアもたしかに、彼女を嵌めた。
　しかし、手を下したのはアクアの周囲にいた人間達だ。
　それなのに、なんで自分ばかり。　

　「続ける」

　『そうですか。では、食事にしましょう。他の方達は部屋を移動しました。
貴女は動けそうにないので、そちらでどうぞ』

　女性が言った直後、金が浮かびあがり天井に消えた。
　次に、彼女の横にペット用の餌皿が現れた。どうやら転移魔法で出現させたようだ。
　中にはスープが注がれている。
　餌皿には更に、【雌ブタ】と表記されていた。

　「くそっ、くそっ！！」

　涙が溢れてくる。
　どうしてこんな扱いを受けなければいけないのか。
　彼らの方が酷い事をしたのに、何故、どうして自分だけがこんな目にあわなければならないのか。
　怒りが、屈辱を振り払った。
　男に抱かれた、乱暴された、あぁ、いいさ。
　あの男達を全員地獄に送ってやる。
　そして、自分が笑ってやるのだ。
　生き延びて、笑ってやる
　悔しさで痛む体を引き摺って皿の中のスープに口を付ける。
　それが本当に愉快、とばかりに女性は嗤った。

　『あぁ、良いですね。その負け犬の顔。
その食器を選んで正解でした』

　このふざけた女も絶対引き摺りだしてやる。
　そして、同じことをさせてやる。
　

＊＊＊

　マイクのスイッチを切って、私は息を吐き出した。
　本当なら出したくなかった映像まで持ちだして、あの女に思い知らせてやろうと舞台を整えた。
　
　「人間、そんな簡単には変わらない、か」

　標的のメインである彼女は、怒りを覚えるだけで反省はやはりしていないようだ。
　しかし、それで良い。
　予想通りの展開だ。
　お楽しみはこれからである。
　そう、まだメインイベントであるかくれんぼが残っているのだ。
　それさえ始ってしまえば、あとはルール無用である。
　誰かが生き残るまで、終わらない夜が始まるのだ。

　「お腹減ったな」

　私は予め用意しておいた料理に手をつけた。
　パンを千切って口に放りこみながら、考える。
　ネットでの知識しかないが、こういった呪術、とりわけ降霊術に関しては色んなものを寄せ付けやすいらしい。
　そのほとんどが上位存在ではなく下級の幽霊らしい。種族、人間、動物、善悪すら問わず、とにかく磁石のようにいろんなものを呼び込むらしい。
　だから、夢だ妄想だと言われても良いから、賭けに出てみた。
　ひょっとしたら、妹が、死んだ妹がここに来てくれるかもしれない、と願って、私はここに留まって成り行きを見守ることにしたのだ。

　「あ、そうだ。蛇だけ片づけておかないと」

　大事な中身として、あの哀れなエディの肉体を使わなければいけないのだから。
　
　

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