聖獣キアルラ、本日も主が規格外です

kei

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猫(聖獣)、環境が整えられていく

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それから、数日。

私は気づいてしまった。

(……環境が、私向けに変わっていないか?)

最初は、気のせいだと思っていた。

だが。

水皿。
高さが、子猫サイズだが、魔力を乱さない素材。
(猫用だよな?
 猫用だよな!?)

寝床。
ゆったりと、寝られる大きさ。
柔らかい。
だが沈みすぎない。
(これ、長命種向けの寝具だろ。
 バレてるのか?
 バレてるのか!?)

私は、乳母を見る。

乳母は、にこやかに微笑んだまま、何も言わない。

(これ……バレてるな……きっと……)


********************


ある日。

アリーが刺繍をしている傍にあった敷物の上で、丸くなっていたところ、
乳母が、新しい敷物を持ってくる。

「お嬢様、に、少し厚めのものを」

(“猫用”を強調するな)

それが敷かれた場所は、アリーから数歩離れた場所。
しかも、私がドアから出るための動線上。

(逃げ場を塞ぐな!)

私は、一瞬だけ目をやったものの現在の敷物からは動かずにいた。

乳母は満足そうに頷く。

「……やはり、お嬢様のそばが落ち着くようですね」

(落ち着くけど!
 落ち着くけども!)


********************


夜。

屋敷全体に、穏やかな結界が張られた。

アリーが天井を見つつ、両手を天井に向けて開くように動かすと、ふわりと温かな風と、かすかな花の香りが周りに漂い、部屋を通り抜けていった。
強度は低い結界。
だが、聖獣の魔力循環に優しい最低限の結界。

(猫のための結界って何だ)

私は、天井を仰ぐ。

(……詰んだな)

アリーが、私を見て、首をかしげる。

「……いや?」

私は、ゆっくりと首を振った。

(いやじゃない。
 いやじゃないが……)

私は、静かに理解した。

(この屋敷、“猫を飼っている”つもりで、聖獣を保護し始めている)

胃が。
とても、痛い。

(……恩返し、いつ終わるんだ、これ)

アリーは、何も言わず、私の額に、そっと額を寄せた。

温かい。
安心する。

(……ああ)

私は、観念した。

(守るつもりが、守られてるな、これ)

その夜、私は三度、ため息をついた。

 一度目は、現実。
 二度目は、覚悟。
 三度目は――

(……まあ、しばらくは、いいか)

聖獣キアルラ。
屋敷猫としての生活を受け入れ始める。
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