異世界の救世主になろう!~主役はやっぱりヒーローだ~

☆ウパ☆

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亀を助けても竜宮城に行けるとは限らない

5-1 従者達は忙しい

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「さて、明日からの行動についてだが、俺はもう決めてある!」

小さい部屋の中に一つだけあるベッドに腰掛けた真は、得意気な顔になって目の前で床の上に正座して期待の眼差しでこちらをみている二人の反応を待った。

「流石です!シン様!」
「よっ!お仕事がお早い!」
「フッフッフ、その行動について俺がどう考えているかわかるか?」
「いえ!私達には到底分かりません!」
「どうぞ無知な私達にお教え下さい!」

「良いだろう...俺は先日のキコを仲間にした日にある事に思い至ってしまったのだ。」

「そのある事とは...?」
「...」

二人が唾を飲み込んだのがわかった。

「お前達の他にも前の邪神に仕えていた奴らが目覚めるんじゃないかという事だ!」
「おぉぉおお!!」
「た、確かに!!」

「そこで!世界征服の一環としてまずそいつらを仲間に引き入れ!」

「シン様の力を世界中に知らしめ!」

「要らない奴や逆らう奴らは全員切り捨て!ということですね?!流石はシン様!!」

「ハッハッハ!それでは明日から早速お前達の後輩探しに出掛けるぞ!」
「先輩としてシン様の従者としてシン様に褒められるようちゃんと頑張ります!」
「やりました!私にも後輩が出来ます~!」
「では、そういう事で諸君!寝ようか。」
「「はーい!」」

真は腰掛けていた場所からベッドの中心へ移り、布団を被ると自らの従者を呼んだ。

「アンコウ~」
「はい!失礼致します!」

すると、布団の中に小さい小柄なアンコウが侵入し、真はそれを横に来させると覆うように抱きつく。なんとも言えない心地の良い感触が毎晩、真を深い眠りへと連れていってくれる。

「あー、これこれ。これだよ~抱き枕としては満点だな。」
「ありがとうございます!」
「シン様!どうして私はお使いになって下さらないのですか?!」

べッドの横に立って二人が抱きつく様子を見ながらぷくーと頬を膨らませながらキコが近付いてきた。

「いや、だってお前抱いたら、アウトじゃん。アンコウでも充分アウトだけどお前、育つ所はちゃんと育っちゃってるから俺の理性が──」
「じゃあ、シン様は幼女がすきなのです──」

「うぁぁああ!!わかった!来い、お前も来ていいから!皆まで言うな!俺の立場がぁぁあ!!」

◆◇◆

真達は北にあるという《ガノナ山》に向かうべく、準備をしていた。

「宿の店主のはなしでは、最近ガノナ山の頂上では異常な程の大雪らしく、私たちはその話が一番有益とかんがえまして...どうしたんですか?」
「シン様、目の下にそんな大きなクマつくって眠れなかったんですか?」
「へ、へへへ。お前はぐっすり眠れていたな。」
「はい!久しぶりに晴れ晴れとした気分です!」
「そうですか、良かったですね。」
「そういえば、シン様のその武器も変えないといけませんね。」
「グローブは駄目なのか?」
「いえ、ダメという訳では無いのですが。聞いた話ですがどうやら格闘家モンクの冒険者はグローブの上に手甲ガンドレッドを装着するらしいです。」
「はい!シン様にそもそも武器って必要ですか?手刀食らった時とか素手でも充分私の頭割れそうでしたよ。」
「ふふ、確かに必要ありませんね。」
「そだな!取り敢えず見栄えが良くなるように昨日買ったこのヘルムは着けとくか...」

◆◇◆

「俺寒いの苦手なんだよな~。」

北へ行くに連れ周りの気温は下がって行くばかりだった。行き先の《ガノナ山》は目と鼻の先だが、冷たい風が真の全身に当たって山頂に向かわせる気を失わせてくる。
周りは見渡す限りの草原になっており、時々岩や気が生えているがこの風を凌げるものは無かった。

「これ程の気温ですと氷点下でしょうか...」
「馬車でもあればなぁ...」

真がそんな事を呟くとアンコウと並んで後ろを付いてきているキコが何か気付いたように二人に言った。

「シン様、先輩!後方から馬車が二台来ます!」
「おお!ありがたい、乗せてもらおう!」

馬車はみるみるうちに真達に近付いてくる、かなりのスピードを出しているのか馬車の後ろは砂ぼこりが上がっていた。やがて、馬車は勢いを抑えないまま三人のすぐ横を通り過ぎると、少し先で止まった。馬車から降りてきたのは幾人かの屈強そうな男ばかりで武装していた、特に上下で合わせていない様子だった。

「おい、ちょっと馬車に乗せてくれねーかな?俺達あの《ガノナ山》って山の頂上に行きたいんだけど...」
「ガノナ山?!正気かよ?!その装備で?!」

男達は三人の身なりを確認し、アンコウとキコの顔を見てかなり顔が緩んでいる。

「乗せるのは良いが、運賃代貰わなきゃな!!そっちの姉ちゃんでよぉ!」
「いや、俺はそっちのゴスロリ来た女の子が良いかな!ひひひ!」

男達はケタケタと笑いながらこちらへ近付いて剣や棍棒を出したりと武器を見せ始めた。

「おい、二人とも聞いたかあいつら運賃代欲しいんだと。」

「あぁ、たぁーぷりと楽しませてくれればその分だけ遠くまで連れてってやるぜぇ!まさにぶっ飛んでなぁ!」

豪快な笑い声をあげながらジリジリと近寄ってくる。

「お前ら、ご要望通り楽しませてやれよ。俺はそこら辺でみてるから」

「おいおい、聞いたかよ、あの腰抜けが言った言葉!アヒァヒァヒァア!」
「そこら辺で自分が連れた女を見てるんだと!ブハハハハ!」
「だが、お生憎様だなぁ、うちの馬車は男は乗れねぇーんだよぉ!!」

そう言って取り出したのはボウガンだった。その矢の先の照準を真に合わせ、引き金を引くと真の胸に当たる──はずだった。
その矢はいつの間にか真の後ろにいたハズのキコが真より数メートル前で矢を掴んで止めていた。そして、その隣に並ぶ様にアンコウが立っていた。

「なんだ?!ボウガンの矢を止めやがった!」

通常では有り得ない速度で矢を掴んだ、それは彼女達を十分その男達より戦闘に長けていることを証明していたが彼女達の顔はとても深刻な、恐怖に染まった顔をしており、汗がダラダラと噴き出す。
理由は今彼女達の後ろにいる我が主が、この下品な男達のせいで乱心になった場合、まさにが来るという事、自らが仕える主に絶望されるという事は仕える者としては一番最悪の事態なのだが、今の彼女達が一番望まないのは自ら仕える主に殺される事だ。

「おい」

突然、後ろから掛けられた声に二人はほぼ同時に肩を震わせた。振り返る事が出来ない、恐怖で声を発した人物の顔が見れなくなっていた。

「時間を取るな、すぐ終わらせろ」

「か、畏まりました...」
「意のままに...」

「なんだぁ?その気になったか?お?」

二人は睨む、この従者としてあるまじき自分の主人に殺されそうになっている最悪の状況を作り出したこの疫病神達に。彼らが穏便に馬車を提供すれば誰も苦しまずに済んだというのに。
睨んだままでいると主人からまた急がせる声が耳に届く。

「おい、あと10秒以内な。馬車は1台で良いや、あと一人だけ馬車操縦出来る奴ね。はい、じゃあスタート。10…9…──」

まさかのテンカウントが始まるというこの事態、まるで爆弾の導火線に火がつけられたような気分、彼女達は焦りながら目の前の疫病神達を薙ぎ払っていく、男達の悲鳴が聞こえる中、彼女達は蹂躙を続け、あっという間にその影は一つだけとなった。

「…2…1…0、はい!よく出来ました!」

しかし、彼女達は無言のまま小刻みに震えているのがわかる。これには流石に真もやり過ぎたと感じたらしく、労いの言葉と一緒に詫びの言葉を口にする。

「お疲れ様、因みに怒ってないよ?」
「「え?」」
「ああ言えば仕事早く終わらせるかなと思って。ごめんね。」

それを聞いた途端彼女達はヘナヘナとその場にしゃがみ込んでしまった。

「シン様...」
「冗談キツいです...」
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