異世界の救世主になろう!~主役はやっぱりヒーローだ~

☆ウパ☆

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亀を助けても竜宮城に行けるとは限らない

5-3 捻じれ

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重い、そう思って目を覚ました。懐を見れば頭に布団を被って真の身体に抱きついてこちらをニコニコと見ている少女が一人。まるでよく懐いた犬のようだ。

「シン様、今日は一体どうしましょうか」
「アンコウ…そうだね取り敢えず、宿変えようか。」

今、真達が寝泊まりしているのは7畳ほどの間取りにシングルベッドと簡素な机があるだけの部屋だ。そのシングルベッドの上に五人でギュウギュウ詰めになって寝ているので、寝ている間に呼吸出来なくなるのではないかと心配になる。
まさか、従者が増えてこんな問題にぶち当たるとは…
資金を無駄にしないようにとケチを付けたのが間違いだった。
しかし残り資金は昨日真達を襲おうとした屈強そうな男達から貰ったのでまあまあ、余裕はある。
朝に限らずこの街の屋台が出ている通りはうるさい。後ろを付いて来る従者達はそれなりに皆美人なので道行く人々がすれ違う度に視線を送ってくる。しかし、その様な視線だけではない、妙な視線を送ってくる者もいる。恐らく帝国の騎士の集団だろうか、大人数の騎士の横を通ると余計に視線があつまる。

理由は簡単、先頭を歩く男は黒い安物のヘルムと冒険者集会所で貰ったグローブだけを装備しているのに対し後ろを歩く美の付く女性達。
見たこともないくらい素晴らしいゴスロリドレスに黒い日傘を持ち、その中では一番歳下のハズなのに周りの女性達から先輩やらお姉様やらと言われている謎の白髪ツインテールの美少女。
背中に自分の身長より高く重そうなアックスを持った、純粋な笑顔を浮かべているサイドテールの十代後半と思われる美少女。
見たことのない衣装を纏っているがやけにそれが板についている青髪の美少女と黒髪ロングの美女。

「(街を歩くだけでこんなに目立つとは、不覚!)」

真はヘルムを被っているがそれ越しでも分かるこの集中した視線、後ろの従者達は気にしていないようだがこの重圧は元々普通の高校生だった真にはとても耐えられなかった。
兎に角人のいない路地裏へ逃げ込むように入っていった。
少し暗くなったなと感じ、さらに奥へ進むが案の定人はいないのでひとまず緊張から解き放たれたと思った。
しかし、それもつかの間の事だった、先程の大人数の帝国騎士達が後ろから声を掛けきた。
付いてきたのかと思っていると反対側からも同じ甲冑に身を包んだ騎士達がやって来た。トモエが先陣を切って用を聞く。
まあ、真には大体察しが付いたのだが。

「何だ。」

「いやぁ、ちょっと道をすれ違う時に君達のこと可愛いなって思ったんだよ...」
「それで、ちょこっと俺達と遊んでくれないかなぁと思ってさ。」

ほら来たやっぱり、と真は悟られぬように疲れた表情をつくった。

「いや、すんません。これ、うちの連れなんでそういうのはちょっと...」
「ああ、その娘達の所有者だね?」
「は?所有者?」
「その娘達見たところ見栄えは良いけど奴隷だよね?お金出すからさ、ちょっと貸してくれない?」
「何故、奴隷だと?」
「だってちゃんと鎖で繋いでるじゃん!」

男が指さした方はマイとトモエの右と左の手首だった。
真はそれを見て男達が勘違いした理由を察し、額に手を当てた。

はいバカ、どこの世界にこんな奴隷の繋ぎ方があるんだ、異世界人の自分でも分かるのに。

「お兄さん達は、君達国民のために朝から晩まで頑張ってて凄い疲れてるんだぁ、だから癒してくれないかなぁ?」
「ほら、とっととこの金持って新しい奴隷でも買ってきなよ~。」

革袋をチャリチャリと鳴らして真に近付き、それを無理矢理手に持たせる。
昨日会ったあの男達と変わらないなと思いながらその渡された革袋を疲れた目で見つめる。
そして、その革袋を渡した男の顔に叩き入れた。

「いえ、お返しします。」

男は信じられないという顔を真に見ている、周りの騎士達も驚いた顔をしていた。

「おい!その男を取り抑えろ!帝国騎士に向かって暴力を振るうとは帝国に対しての反逆行為だぞ!」
「そんな、暴力だなんて。俺はただこの人にお金を返しただけですよ。」
「そんなものは言い訳だ!」
「取り抑えろ!」

先頭の騎士が真に手を伸ばし、捕まえようとした時だった。誰が予想出来るだろうか奴隷と思っていた女が男に突然鉄拳を入れ、騎士達の上を回転しながらぶっ飛ばされたなどと。それも、先程までずっとタジタジしていて、この中だったら一番大人しそうな青髪の少女の鉄拳だったのでより驚きである。

「えっと、シン様に…ら、乱暴は止めて下さい…」

泣きそうなうるうるとした目でその様な言葉を言われても先の行動で彼女が異常なのは周りの騎士達に嫌と言うほど伝わっている。
その少女を宥める様に隣の黒髪が青髪の少女の頭をなでている。

「よーしよし、よく出来たぞマイ。」

「何なんだ!その女は!」

「住みずらい所だな、帝国って。まだ王国の方が良かったかな。」
「おっしゃる通りですね。昨日の男達と言いこの国の者達は少々野蛮かと。」
「今すぐこの国を堕としても良いんだけど、この国は商業が盛んらしいからな。あちこちから商人が集まってくる、すると当然各地の情報も集まってくるからあまりそうはしたくないんだよな。やっぱり今回は寝床を変えるだけにしておこう。この騎士達はマイとトモエお前達に任せる、初仕事だ。適当に殺しておけ、顔を見られたからな。」
「御意」
「が、頑張ります!」

◆◇◆

彼、帝国戦士長(名をタビルス)は近辺国家の機密会議に参加しており、彼の他にも円卓を囲む形で各国の高位の者達が揃っている。今問題のエルフ国との戦争状況について話し合っていたのだが、今回も人間とエルフの戦争は大きく動き始める様子は無いという報告で終わるものだと思っていたのは彼だけでは無かっただろうその証拠に今上がった報告に数人が驚愕の表情を浮かべていた。

「なに、もう一度確認する。エルフの国が軍を退き始めただと?」
「どういう事なのだ。この戦争は十年以上前から停滞したままだったろう。」
「わ、わかりかねます。」

報告をした若い男性は質問してきた自分より身分が格上の男性に責められるように質問され、声が震えていた。

「何を考えていると思う?閣下。」

閣下と呼ばれた逞しい髭を蓄えた男性はその自前の髭をいじり始める。

「新兵器の導入か…あるいはでかいバックがついたか。」
「バカな、エルフに加担する者などいるはずなかろう。」

彼はそのでかいバックを想像し、一番線がありそうな者達を連想した。
何処にも属さず人間を敵に回しても苦にはならない者達…

「魔王軍、でしょうか…」

魔王、生きとし生けるもの達に死を与え、人では考えられない膨大な力を優しているという文字通り魔の王。そんな者が人間の敵になったとなればかなりまずい事態なのはここにいる者達は重々承知である。
一番考えたくないと思いながらもその線が一番濃厚だ。

「それが、本当なら、人類はまた五百年前の様になるぞ。」
「邪神か…ふん、邪神に比べたらまだ魔王の方が可愛いものだ。」
「噂では魔王が邪神の復活を目論んでいるなどという物もありますが。」
「さらに、付け加えると、かつて邪神が使役していた使い魔達が邪神の復活を感じて次々に蘇り始めたという報告が上がっております。」
「なんだと…アレらは皆古代兵器と同じような者ではなかったか?」

全員が応えたくない、考えたくもないという顔をしている。

「その、エルフが邪神を蘇らせた…というのは考えられませんか?」
「やめろやめろ、眠れなくさせる気か。そんな恐ろしい事良く考えられるな。」
「あぁ!」

突然一人の男性が立ち上がった、彼は冒険者協会のトップ2の地位にいる男だ。 
ひとまず大声をあげた理由を聞いてみた。

「どうしたんだね?」
「あ、え、す、すみません。でもこの間酒場でエルフの奴隷商人と飲んでいた時にエルフ国が邪神の傘下に入ったとかって言ってたのを思い出しまして…」
「なんだと!もっと詳しく聞かせまたえ!」
「すみません…どうせホラだと思って聞きませんでした…」
「大馬鹿者!ちっ、どうする?!エルフが邪神の傘下だと?!という事は邪神は既に蘇っていたのか?!」
「ちょっとお待ち頂けますか?」

手を挙げたのはローブを纏った老人だった。

「あなたは魔導師協会の…」
「ええ、ゼフノです。邪神の復活は有り得ません。」
「なに?!何故その様に断言出来る?!」
「邪神の復活にはかつて邪神を封印した15英雄の残した『鍵』が必要となります。」
「鍵?なんだそれは。」
「鍵と言いましても本性は、かつて英雄達が使っていた武器です。それが邪神復活に必要な鍵となります。その内の一つ、偉大なる魔導師でもあり、15英雄の一人でもあったヒューストンが愛用していた『青海の杖』は我々魔術師協会が保管していますので、復活は有り得ません。」

おお!という声が部屋全体に響き渡った。

「では、邪神は復活していないのだな?!それだけでもかなり肩が楽になった。」
「それともう一つ、朗報がございます。」
「なんと!次はどの様に驚かせてくれるのだ?」
「皆様が先程話しておりました。邪神の使い魔ですが、一体を捕らえる事に成功致しました。」

うおお、と先程よりも大きな歓声があがり、室内はあちらこちらでざわめきが起こっている。

「南にあります、赤の草原で例年より早い紅葉が始まりましたので異常を追究すべく私を含めた《英雄級エピック》の魔法を使える魔術師40名程で向かいましたところ、邪神の使い魔を名乗る雷の翼を持った巨大な鳥を捕らえる事に成功しました。」
「その鳥は従えているのか?」
「いえ、残念ながら従える事は出来ませんでしたが《青海の杖》を用いまして本体の意思を無視し、操る事に成功致しました。」
「おお!では、今回のエルフ国の指揮系統をゼフノ殿に一任する。」
「依存ない」
「では、近いうちに周辺国家を統べ、エルフ国に一斉攻撃を仕掛けるという事で良いですな?」

全員が納得した様に了承の意を示す。

「では、次の議題ですが──」

タビルスはどうにか山場は超えたと一安心するとホッと胸をなで下ろす。

「先日、帝国内で帝国騎士が数十名殺害されるという事件がおきまして──」
「そんなものは帝国内の問題だろう、周辺国家の我々には関係のないことだ。」

「失礼しました、では次の議題に移らせて頂きます。」
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