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帝国の英雄と兜の男
7-3 勃発
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「とにかく!一緒に来てもらう!」
「何をするつもりですか!離してください!」
ネイシャスに腕を掴まれて焦ったシンはなんとか振りほどこうとしたが子供では考えられない力でぐいぐい引っ張られていく。
「新型のゴーレムだなんて聞いた事がない、そうなれば当然持ち帰って研究に決まってるだろう!」
その様子は妹に引っ張られる兄としか捉えてはくれないだろう光景だったので不審感を抱く者や止めに入る者は誰もいなかった。
その時、突然上空から落ちて突き刺さった槍がネイシャスとシンの間の距離を離した。そしてそれに続いてすぐにその槍の持ち主も落ちてきた。
シンはその姿を見てすぐ誰なのか理解した。そしてその人物からの強い殺意を感じ取った。
「マスター!」
刹那、エリスは地に刺さった槍を引き抜くとネイシャスへ一閃した。
しかしネイシャスもその強い殺意を感じたのか、ギリギリで迫る槍を避けた。
周りの人々は一瞬の出来事で何が起きたのか理解まで時間がかかったようだが自分に巻き添えが食らう事を恐れ逃げ惑っている。
「マスター?という事はあなたが彼の所有者ですか。」
「シン、少しの間下がってて。この女──殺すから。」
冷たい視線を向けられるもネイシャスに怯みの様子は伺えなかった。
「話は聞きましょうよ。私はその新型のゴーレムとやらに興味がある、いや──私達には必要だ。そうだ、私達でそれを買ってあげますよ。あなたが購入した分の五倍つけましょう、悪くないでしょう?」
「黙れ、これ以上私を不快にさせるな。三度目はもうごめん葬る。」
「……なるほど、その様子だとそのゴーレムは実際にいる人物、あなたの知人の模造品のようですね。それとも実際にいた人物ですか?フフ」
「少し黙れ。」
シンは初耳だったのでもっと詳しく聞きたいという思いがあったがエリスの機嫌がどんどん悪くなっていくのが分かった。
「図星ですか~?まあ、亡くなった人ともっと居たいからという理由でゴーレム買う人多いですもんね~」
嘲笑うネイシャスにエリスの渾身の一撃がフルスイングする。
上から下へ振り下ろされた槍は地を抉って亀裂を入れる。
対するネイシャスはこれを軽やかに避けた。
「黙れと言っている、餓鬼。」
「──あぁ?餓鬼だと?殺されたいのかてめぇ。」
「やれるものならやってみろ。」
「やってやるよ、お前を殺して後ろのゴーレムを持ち帰るためにな!」
ネイシャスは腰に携えていた柄が黒と白に別れた三十センチ程の二本のナイフを取り出し、エリスに切りかかった。しかし、エリスは器用に槍で弾き返した。
「(やっぱり昼間あの子に近づいた時感じたのは付与鎧だったんだ。だとしたらあの娘は一体…)」
二人の戦闘は激しさを増して狭い通りから屋根へと変わった。
「(僕の戦闘能力はマスターより高いって聞いたけれど明らかに今のマスターと戦っても勝てない…)」
シンはその戦闘をただ見守る事しかできなかった。
◆◇◆
「まずいぜおい。早くあいつらと合流して帰ろう。面倒事はごめんだ。」
先ほどネイシャスから逃れるために人混みをかき分けて移動している途中で背後から爆発音のような音が轟き、通りは一気にパニックになった。
「祭りのイベントとかじゃなさそうだし、あいつらじゃないよな…?」
一瞬不安が過ぎるがそれを否定する声が聞こえた。
「シン様!ここにいらっしゃったのですか!」
見ると自分の従者達が揃っていた。
だが真が確認できたのは四人だ。
「おお、お前達か。あれ?キコは?」
「それが、私達は行動を共にしていたのですが、知らない間にキコが消えておりました。」
「なに?!じゃああれはキコだったのか?」
「あれとはあの衝撃が走った様な音の事ですか?それでしたら違います。その時は一緒にいたので。」
「そうか、とにかく面倒事はごめんだからさっさと帰るぞ。キコは俺が探してくるからお前達は先に行ってろ。あ、あとこれ。」
「これは?」
「マイとトモエ、それからアズマは武器を持って無かったろ?お前達には必要無いかもしれないが一応持っておけ。」
「これを、私めに…?あ、ありがとうございます!」
「た、大切にします!」
「感謝します、シン様。」
「礼は良いから早く行け!」
◆◇◆
「皆さん?どこですか?アンコウ先輩?マイちゃん?トモちゃん?アズちゃん?」
キコは人気のなくなった通りを一人歩いていた。今も地鳴りの様な音が聴こえる。
「シン様もいらっしゃらないし、大体何が起こってるんですか?…もしかしてあの音の正体はシン様が誰かと交戦してるとか?!だったら加勢しに行かなくては!」
キコは振り返ると音のした方向へ走り出す。
「おっと、うっかりしてました。仮面を付けないとシン様に怒られてしまうんでした。危ない危ない。」
エルフ王から貰ったアイテムポーチの中から魔女協会を名乗る際に使用した仮面を取り出すと外れない様に着用した。
「これでよし!おや?──あれは、誰でしょう?」
キコの視線の先には四人の男女がいた。どうやらキコと同じく音の方向へ向かっているようだった。
「(確か、シン様と一緒に開拓村へ来ていた…)」
「全く、シンの奴が何処かへ消えたかと思ったら今度はエリスまで!」
「今度から首輪でも繋げて置きますか?」
「おお、タビルスっちにしては悪くない案だね!」
「」
その時、先頭を走っていたラキシードが突然立ち止まり後ろに続いていたレイシェルと衝突した。
「いったーい!なんで急に止まるの!」
鼻を押さえたレイシェルがラキシードに怒鳴るが彼女達の前に立つ影を見て黙り込んだ。
初めに話しかけたのは後ろから遅れて止まったタリアだった。
「おい、お前何者だ?」
「私はキ…じゃなくて魔女協会の…えっと…えーと…そ、そう!エトという者です!」
「その魔女協会のエトさんが私達に何の用ですか?」
「先程あなた達の会話を聞きまして、宜しければそのシンという者について少しお話を聞かせては貰えないでしょうか?」
「どうしてシン君の事を──」
「──そんな事はどうでもいい。それよりも…お前、その斧どこで拾ってきた?」
「これですか?」
ラキシードの視線の先はキコが背負っているキコの背丈よりも高い大きな斧にいっていた。
「良いでしょう?貰い物ですが、何度か試したんですけどかなりの業物でした。」
「そりゃそうだろうな、俺が特注で王国一の職人に作らせた物だ。」
「え!アレがラキシードの斧?!」
「あの失くしたって言ってたやつか?」
「貰い物と言ったな、誰から貰った?」
「知りたいですか?でも、だめです。まあ私の上司って事ぐらいは教えてあげますよ。後はそちらがこちらの質問に応答してくれればこちらもお話しますけど?」
「いや、必要ないな。力ずくで話させてやる。」
「野蛮ですね、でも賛成です。ただ一応加減しますけど、起きたら三途が見えても恨まないで下さいね。」
「こっちのセリフ…だ!」
キコが斧をラキシードが大剣を引き抜き、両者の武器が火花を散らした。
◆◇◆
「はっ!」
エリスの振るった槍がブンと音をたてて空を切った。
後ろへ飛んだネイシャスは勢いをころすことなく数十メートル下がった。
「おめぇトロいんだよォ!当たるわけねーだろがァ!」
「そっちこそ、私に一度も攻撃出来てない。」
「あぁ?なんだとォ?…良いぜてめぇなんざに魔法を使うのは癪だが本気で潰しにいってやるよォ!」
「こちらも本気で殺しにかかる、《召喚!英雄級魔法超位級天使!》」
「ほぉ、英雄級の召喚魔法を無詠唱で…だが呼び出した天使が超位級天使か…良いこと教えてやる、召喚てのは召喚士によって強さが大きく異なる、それが聖騎士となれば尚更だ。《召喚!英雄級魔法!超位級契約魔》」
ネイシャスが創り出した魔法陣から現れたのは美しい女性、だが背中から伸びたコウモリのような翼と頭から生えた角が人間ではないと物語っていた。
エリスは姿を見た瞬間その女性の正体に辿り着いた。
「悪魔…」
「正解、よく分かったじゃないか。」
「私も噂では聞いたことあるけれど実際に見たのは初めて。」
悪魔を呼び出すにはいくつかの方法と条件がある。
悪魔を呼び出す方法は大きくわけて二つになる。
自分の魂と引き換えか、倒して無理やり使い魔にさせるか。
前者は後者より簡単で儀式をすれば呼び出せる、だが自分の死後の魂は悪魔に食べられることになる。後者は前者より実行することが難しくなる、だが力ずくで従える事が出来ればいついかなる時も悪魔を呼び出し命令を聞かせることが出来る。
この状態になれば死後は悪魔から魂を食われることはないが倒すことが難行苦行なのでほとんど不可能に近かった。
目の前にいるネイシャスは特に大きな儀式を施す事なく悪魔を呼び出したので恐らく後者だろうと推測できた。
そして、呼び出した悪魔は天使とは違い、自分の意思で動く事ができる。
人間が呼び出せる天使は元となる天使の力を少し拝借しただけなので天使の形こそしているが意識はない、よって召喚士が命令しなくては何も出来ないただの人形なのだ。代わりに悪魔は同時に二人の召喚士が呼び出す事はできないが天使は可能になり、召喚も悪魔より容易である、これは天使が多くの人間達に恩英を与えるという事が関係している。
エンプーサと呼ばれた悪魔はゆっくりと前屈みになっていた上体を起こした。
「あら?あんたが私を呼ぶなんて久しぶりじゃない?」
「私もお前を呼び出したくなんてなかったさ。」
「本当、可愛くないわ。」
「うるさい、さっさとやれ。」
「ミカエル!《聖焔》!」
『はあぁぁぁあ!──』
ミカエルの手から眩しさを感じさせる炎がエンプーサ目掛けて放たれる──前にミカエルの姿は光の粒になって拡散した。
原因は一瞬のうちにミカエルの目の前まで迫っていたエンプーサの一撃だった。エンプーサの左手は巨大な鎌に変形していた。
「…!」
「驚いた?私ね、色んな動物に化けられるのよ?これは、蟷螂。」
傍から見ていたシンは言葉を失った、エンプーサが化けられることにではない、エンプーサの動きが全く見えなかったことにだ。
「(あんなのに勝てるわけがない!)」
エリスの敗北は確定している、彼女のもつ最高位の魔法が一撃で破られたのだから。
「マスター!僕を置いて逃げて下さい!」
「死んでも断る。」
エリスの瞳はシンがどれだけ懇願しても揺るがないものだった。
「(なんとか、この状況を打開する方法…)」
あれやこれやと考えているうちにシンはあることに気がついた。
「な、なんだ?!高速で強い…何かが…こっちに…」
シンには最新型のゴーレムだけあって様々な機能がある。その中に索敵、自分から半径3キロ以内の全てを把握できる機能。そして、対象の強さを大まかに測定できる機能だ。
その二つの機能で今まで感じたことのない強さの何かが接近して来るのを感じた。
それは、人間にしては強すぎ、移動が速すぎる者だ。
「(真っ直ぐこちらに向かって来ている…)」
エンプーサとエリスは激しい近接戦闘をしておりこの気配には全く気づく様子は伺えなかった。
「(この向かって来る何かが味方じゃなかった場合、かなり不味い事になる。彼女が言っていたグローという男なのかもしれない。)」
と、シンが考え事をしているうちにエリスが体勢を崩してしまい追い詰められてしまっていた。
慌てて走り出すがその距離は一瞬で詰められるものでは無かった。
鋭い鎌となったエンプーサの腕が振り下ろされそうになった時、それはやってきた。
激しい風と豪音で何が起きたのかさっぱり分からなかったが二人の距離は離れた。
そして、姿を現したのは黒い兜を被った者だった。片膝をついて俯いていたがやがてゆっくり兜の正面を見せた。
「さて、誰かこの状況を説明してくれる人は?」
「何をするつもりですか!離してください!」
ネイシャスに腕を掴まれて焦ったシンはなんとか振りほどこうとしたが子供では考えられない力でぐいぐい引っ張られていく。
「新型のゴーレムだなんて聞いた事がない、そうなれば当然持ち帰って研究に決まってるだろう!」
その様子は妹に引っ張られる兄としか捉えてはくれないだろう光景だったので不審感を抱く者や止めに入る者は誰もいなかった。
その時、突然上空から落ちて突き刺さった槍がネイシャスとシンの間の距離を離した。そしてそれに続いてすぐにその槍の持ち主も落ちてきた。
シンはその姿を見てすぐ誰なのか理解した。そしてその人物からの強い殺意を感じ取った。
「マスター!」
刹那、エリスは地に刺さった槍を引き抜くとネイシャスへ一閃した。
しかしネイシャスもその強い殺意を感じたのか、ギリギリで迫る槍を避けた。
周りの人々は一瞬の出来事で何が起きたのか理解まで時間がかかったようだが自分に巻き添えが食らう事を恐れ逃げ惑っている。
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「黙れ、これ以上私を不快にさせるな。三度目はもうごめん葬る。」
「……なるほど、その様子だとそのゴーレムは実際にいる人物、あなたの知人の模造品のようですね。それとも実際にいた人物ですか?フフ」
「少し黙れ。」
シンは初耳だったのでもっと詳しく聞きたいという思いがあったがエリスの機嫌がどんどん悪くなっていくのが分かった。
「図星ですか~?まあ、亡くなった人ともっと居たいからという理由でゴーレム買う人多いですもんね~」
嘲笑うネイシャスにエリスの渾身の一撃がフルスイングする。
上から下へ振り下ろされた槍は地を抉って亀裂を入れる。
対するネイシャスはこれを軽やかに避けた。
「黙れと言っている、餓鬼。」
「──あぁ?餓鬼だと?殺されたいのかてめぇ。」
「やれるものならやってみろ。」
「やってやるよ、お前を殺して後ろのゴーレムを持ち帰るためにな!」
ネイシャスは腰に携えていた柄が黒と白に別れた三十センチ程の二本のナイフを取り出し、エリスに切りかかった。しかし、エリスは器用に槍で弾き返した。
「(やっぱり昼間あの子に近づいた時感じたのは付与鎧だったんだ。だとしたらあの娘は一体…)」
二人の戦闘は激しさを増して狭い通りから屋根へと変わった。
「(僕の戦闘能力はマスターより高いって聞いたけれど明らかに今のマスターと戦っても勝てない…)」
シンはその戦闘をただ見守る事しかできなかった。
◆◇◆
「まずいぜおい。早くあいつらと合流して帰ろう。面倒事はごめんだ。」
先ほどネイシャスから逃れるために人混みをかき分けて移動している途中で背後から爆発音のような音が轟き、通りは一気にパニックになった。
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一瞬不安が過ぎるがそれを否定する声が聞こえた。
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だが真が確認できたのは四人だ。
「おお、お前達か。あれ?キコは?」
「それが、私達は行動を共にしていたのですが、知らない間にキコが消えておりました。」
「なに?!じゃああれはキコだったのか?」
「あれとはあの衝撃が走った様な音の事ですか?それでしたら違います。その時は一緒にいたので。」
「そうか、とにかく面倒事はごめんだからさっさと帰るぞ。キコは俺が探してくるからお前達は先に行ってろ。あ、あとこれ。」
「これは?」
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「た、大切にします!」
「感謝します、シン様。」
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キコは人気のなくなった通りを一人歩いていた。今も地鳴りの様な音が聴こえる。
「シン様もいらっしゃらないし、大体何が起こってるんですか?…もしかしてあの音の正体はシン様が誰かと交戦してるとか?!だったら加勢しに行かなくては!」
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キコの視線の先には四人の男女がいた。どうやらキコと同じく音の方向へ向かっているようだった。
「(確か、シン様と一緒に開拓村へ来ていた…)」
「全く、シンの奴が何処かへ消えたかと思ったら今度はエリスまで!」
「今度から首輪でも繋げて置きますか?」
「おお、タビルスっちにしては悪くない案だね!」
「」
その時、先頭を走っていたラキシードが突然立ち止まり後ろに続いていたレイシェルと衝突した。
「いったーい!なんで急に止まるの!」
鼻を押さえたレイシェルがラキシードに怒鳴るが彼女達の前に立つ影を見て黙り込んだ。
初めに話しかけたのは後ろから遅れて止まったタリアだった。
「おい、お前何者だ?」
「私はキ…じゃなくて魔女協会の…えっと…えーと…そ、そう!エトという者です!」
「その魔女協会のエトさんが私達に何の用ですか?」
「先程あなた達の会話を聞きまして、宜しければそのシンという者について少しお話を聞かせては貰えないでしょうか?」
「どうしてシン君の事を──」
「──そんな事はどうでもいい。それよりも…お前、その斧どこで拾ってきた?」
「これですか?」
ラキシードの視線の先はキコが背負っているキコの背丈よりも高い大きな斧にいっていた。
「良いでしょう?貰い物ですが、何度か試したんですけどかなりの業物でした。」
「そりゃそうだろうな、俺が特注で王国一の職人に作らせた物だ。」
「え!アレがラキシードの斧?!」
「あの失くしたって言ってたやつか?」
「貰い物と言ったな、誰から貰った?」
「知りたいですか?でも、だめです。まあ私の上司って事ぐらいは教えてあげますよ。後はそちらがこちらの質問に応答してくれればこちらもお話しますけど?」
「いや、必要ないな。力ずくで話させてやる。」
「野蛮ですね、でも賛成です。ただ一応加減しますけど、起きたら三途が見えても恨まないで下さいね。」
「こっちのセリフ…だ!」
キコが斧をラキシードが大剣を引き抜き、両者の武器が火花を散らした。
◆◇◆
「はっ!」
エリスの振るった槍がブンと音をたてて空を切った。
後ろへ飛んだネイシャスは勢いをころすことなく数十メートル下がった。
「おめぇトロいんだよォ!当たるわけねーだろがァ!」
「そっちこそ、私に一度も攻撃出来てない。」
「あぁ?なんだとォ?…良いぜてめぇなんざに魔法を使うのは癪だが本気で潰しにいってやるよォ!」
「こちらも本気で殺しにかかる、《召喚!英雄級魔法超位級天使!》」
「ほぉ、英雄級の召喚魔法を無詠唱で…だが呼び出した天使が超位級天使か…良いこと教えてやる、召喚てのは召喚士によって強さが大きく異なる、それが聖騎士となれば尚更だ。《召喚!英雄級魔法!超位級契約魔》」
ネイシャスが創り出した魔法陣から現れたのは美しい女性、だが背中から伸びたコウモリのような翼と頭から生えた角が人間ではないと物語っていた。
エリスは姿を見た瞬間その女性の正体に辿り着いた。
「悪魔…」
「正解、よく分かったじゃないか。」
「私も噂では聞いたことあるけれど実際に見たのは初めて。」
悪魔を呼び出すにはいくつかの方法と条件がある。
悪魔を呼び出す方法は大きくわけて二つになる。
自分の魂と引き換えか、倒して無理やり使い魔にさせるか。
前者は後者より簡単で儀式をすれば呼び出せる、だが自分の死後の魂は悪魔に食べられることになる。後者は前者より実行することが難しくなる、だが力ずくで従える事が出来ればいついかなる時も悪魔を呼び出し命令を聞かせることが出来る。
この状態になれば死後は悪魔から魂を食われることはないが倒すことが難行苦行なのでほとんど不可能に近かった。
目の前にいるネイシャスは特に大きな儀式を施す事なく悪魔を呼び出したので恐らく後者だろうと推測できた。
そして、呼び出した悪魔は天使とは違い、自分の意思で動く事ができる。
人間が呼び出せる天使は元となる天使の力を少し拝借しただけなので天使の形こそしているが意識はない、よって召喚士が命令しなくては何も出来ないただの人形なのだ。代わりに悪魔は同時に二人の召喚士が呼び出す事はできないが天使は可能になり、召喚も悪魔より容易である、これは天使が多くの人間達に恩英を与えるという事が関係している。
エンプーサと呼ばれた悪魔はゆっくりと前屈みになっていた上体を起こした。
「あら?あんたが私を呼ぶなんて久しぶりじゃない?」
「私もお前を呼び出したくなんてなかったさ。」
「本当、可愛くないわ。」
「うるさい、さっさとやれ。」
「ミカエル!《聖焔》!」
『はあぁぁぁあ!──』
ミカエルの手から眩しさを感じさせる炎がエンプーサ目掛けて放たれる──前にミカエルの姿は光の粒になって拡散した。
原因は一瞬のうちにミカエルの目の前まで迫っていたエンプーサの一撃だった。エンプーサの左手は巨大な鎌に変形していた。
「…!」
「驚いた?私ね、色んな動物に化けられるのよ?これは、蟷螂。」
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「(あんなのに勝てるわけがない!)」
エリスの敗北は確定している、彼女のもつ最高位の魔法が一撃で破られたのだから。
「マスター!僕を置いて逃げて下さい!」
「死んでも断る。」
エリスの瞳はシンがどれだけ懇願しても揺るがないものだった。
「(なんとか、この状況を打開する方法…)」
あれやこれやと考えているうちにシンはあることに気がついた。
「な、なんだ?!高速で強い…何かが…こっちに…」
シンには最新型のゴーレムだけあって様々な機能がある。その中に索敵、自分から半径3キロ以内の全てを把握できる機能。そして、対象の強さを大まかに測定できる機能だ。
その二つの機能で今まで感じたことのない強さの何かが接近して来るのを感じた。
それは、人間にしては強すぎ、移動が速すぎる者だ。
「(真っ直ぐこちらに向かって来ている…)」
エンプーサとエリスは激しい近接戦闘をしておりこの気配には全く気づく様子は伺えなかった。
「(この向かって来る何かが味方じゃなかった場合、かなり不味い事になる。彼女が言っていたグローという男なのかもしれない。)」
と、シンが考え事をしているうちにエリスが体勢を崩してしまい追い詰められてしまっていた。
慌てて走り出すがその距離は一瞬で詰められるものでは無かった。
鋭い鎌となったエンプーサの腕が振り下ろされそうになった時、それはやってきた。
激しい風と豪音で何が起きたのかさっぱり分からなかったが二人の距離は離れた。
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