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 青葉は両ひざにこぶしを握り締め、下を向いて震えていた。
「青葉、すまない。いっぺんに、いろんなことを詰め込み過ぎたな」
 芳樹は彼の隣に座りなおすと、そのこぶしに手を乗せ撫でた。
 倉崎も声音を柔らかくし、静かに青葉へ声をかけた。
「土門家に戻るかどうかは、君の好きにするといいよ。ゆっくり考えるといい」
「はい」
 その日は青葉の出生の秘密を明らかにしただけで、二人は事務所を後にした。
 帰り道のハンドルを操りながら、芳樹は気軽さを装って青葉に話しかけた。
「まさか青葉が、日本でも有数の資産家の御曹司だった、なんてね」
「僕も、驚きました……」
 声がまだ、弱弱しい。
 無理もない、と芳樹は思った。
 突然、途方もない家族ができたのだ。
 双子の兄弟まで、現れたのだ。
 頭では解っていても、心が付いて行かないだろう。
「ね、青葉。双子のお兄様に、会いたくないか?」
「僕の、お兄様」
 そうさ、と芳樹は言った。
「私のお見合い相手が、そのお兄様なんだ。会おうと思えば、いつでも引き合わせることができる」
「もう少し、考えさせてください」
「いいよ」
 二人を乗せたマスタングは、マンションの駐車場へと入っていった。

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