私は君の夢を見る ~実業家アルファ×薄幸オメガ 私は君を、幸せにしたい~

大波小波

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 アイリッシュコーヒーのおかげで、体がぽかぽかと温まった。
 苦しい胸の内を希に話して、気分が軽くなった。
 宝くじという、生きる希望を与えてもらった。
 一志は、カフェに入ってきた時とは違う心地になった。
 まなざしが、生きてきた。

「ありがとう。とにかく一週間、生き抜いてみるよ」
「そうしてください」
 一志はぼさぼさの前髪を、手櫛でざっくり掻き上げた。
 やつれてはいるが、精悍な印象を受ける整った顔立ちがそこにはあった。
「お客様、その方がカッコいいですよ」
「オシャレをするのも、忘れていたとはね」
 一週間後、また来るよ。
 そう約束し、一志はカフェを後にした。

 希が渡された名刺を見ると、『来栖 一志』とあった。
「来栖さん、か」
 内緒のアイリッシュコーヒーを片付けながら、希は彼のことを想った。
(宝くじ、当たればいいな)
 それから表に掛けてある『準備中』の看板を元に戻した。
 ちょうどその時、希の兄・尊(たける)が戻ってきた。

「何だ。店、閉めてたのか?」
「ちょっとだけ。グラス、割っちゃって。それで」
「グラス代、弁償しろよ」
「はい」
 父の経営していたカフェは、兄が継いだ。
 希は、そこを手伝っている。
 店員ではない。
 あくまで、手伝いだ、と兄は言う。

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