私は君の夢を見る ～実業家アルファ×薄幸オメガ 私は君を、幸せにしたい～

1話 プロポーズ

　一志と希、二人が共に暮らし始めて三ヶ月が経った。
　愛し合い、信頼し合う彼らは、互いの身の上を少しずつ語り、共有した。
　二人とも、両親とはすでに死別してしまったこと。
　一志の第二性は、アルファだということ。
　オメガである希は、一度妊娠したこと。
「それは、兄さんの子？」
「ええ。気づくのが早かったから、中絶しました」
「希……」

　一志は、希を強く抱きしめた。
　なぜだろう。
　涙がこぼれる。
「僕のために、泣いてくれるんですか……」
「そうだよ。涙が止まらないよ」
　口づけ合い、互いの頬を舐めて涙をぬぐった。
　やがてそのまま眠りに就いたが、一志は夜中に目が覚めた。

「希、眠ってる？」
「……」
「寝てるよね」
　はぁ、と溜息をついて、一志は天井を眺めた。
「それでも尊は、このまま放ってはおけないな」
　希に、中絶の苦しみまで味合わせた男だ。
　野垂れ死にしても構わない、くらい憎んではいるが。
　だが、痩せても枯れても希の兄だ。
「第三ステージに、計画を移すか」
　全ては、希の幸せのためだ。
　明日の計画を胸に、一志は再び瞼を閉じた。