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しおりを挟む「な、希。これはどうだろう」
メモには『一希』と書かれている。
「私と希の名前から、漢字を一字ずつ取って『かずき』とか。良くない?」
「ちょっと待ってくださいね」
希は椅子に掛けると、タブレットを操作した。
「姓名判断だと、外格が凶です……」
「ダメかぁ~」
肩を落とす一志に、希はにっこり微笑んだ。
「予定日まで、まだまだあります。ゆっくりじっくり、考えましょう」
「そうだな」
薬指の婚約指輪は、結婚指輪に変わっている。
お揃いの指輪をはめた二人の手は、少し目立ってきた希のお腹の上で重なった。
軽快に、明るく流れる曲は『Take the A train』だ。
ほら、急いで! 列車が来る。
もうレールの音が聞こえているよ。
皆! A列車が到着した!
早く乗って!
「乗り遅れなくて、良かったなぁ」
「何の話ですか?」
「今の幸せは全部、希のおかげだ、って話だよ」
希の髪に、一志はキスをした。
本田の目を盗んで、唇にキスをした。
心から愛する人へ贈る、キスだった。
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