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しおりを挟む麻衣は哲郎の診察を受けた後、リビングで猫のミドリと遊んでいた。
そこに、テーブルに置いた端末が鳴った。
「誰かから、僕に連絡があることもあるんだな」
端末を手にして、驚いた。
「響也さんだ!」
彼は今、黙々と仕事をこなしているはずなのに。
『麻衣か? 今、何をしている?』
「ミドリと、遊んでいました」
『そうか』
黙ってしまった響也に、麻衣は心配そうに声を掛けた。
「響也さん。お仕事中に、僕とお話ししてもいいんですか?」
『実は、仕事が手に着かなくてね』
気が付くと、君のことばかり考えている、という響也の返事に、麻衣は頬を染めた。
次の言葉で、真っ赤になった。
『今夜、君の寝室を訪ねたい。意味は、解るね?』
「え!? はい、あの、でも」
『嫌かい?』
「いいえ、イヤではありません。ただ、今夜の僕の体は、妊娠に向いていないらしいんです」
麻衣は哲郎に、体のリズムについて教えてもらっていた。
要するに、今は子どもができにくい時期なのだ。
『それでもいい。君が、欲しい』
「響也さん……」
ひどく熱を帯びた、響也の声だった。
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