この恋は運命

大波小波

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 賑わいの後には、寂寥感が付きものだ。

「楽しかったですね、響也さん」

「そうだな。麻衣のご家族にも会えて、良かったよ」

 こんな言葉を交わしながらも、ぽつんと二人だけになって、麻衣は思わぬ寂しさを味わっていた。

 そんな折、響也が珍しいことを言ってきた。

「麻衣に、お願いがあるんだが」

「お願い? 何でしょう」

「私の我がままに、付き合って欲しいんだ」

 実は、と彼は打ち明けた。

「かねてから、いつか国中の桜の名木を訪ねてみたい、と考えていたんだ」

 滝桜に、神代桜。淡墨桜、蒲桜、下馬桜……。

「素敵ですね!」

「一緒に、巡ってくれないかな」

 麻衣の返事は、もちろんイエスだ。

「響也さん、早く支度しましょう。急がないと、桜が散ってしまいますよ!」

 途端にいきいきと動き始めた麻衣に、響也は目を細めた。

 思いきって打ち明けて、良かった。

 そう考えて、微笑んだ。

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