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さて、ラブレターを読んだ伊織は、その返事を書かなくてはならない。
そして、それにも抜かりない準備があった。
ラブレターの山を前にするなど、彼にとっては毎日の日課なのだ。
「この原稿を68部コピーしてくれ。そして、こっちを46部」
「はい」
盗み見た伊織の返事は、2種類あった。
『お手紙ありがとう。これからも、その調子で私を慕ってくれたまえ』
『お手紙ありがとう。残念ながら、君の期待には応えられない。諦めてくれたまえ』
思うに、最初の返事は当たり障りのないファンレターへのものだ。
そして2番目の返事は、おそらく交際を願ってきた人間へ宛てたものだろう。
(たった一行なんて、そっけないなぁ)
それでも、コピーされた100枚以上の手紙に、直筆のサインをせっせと入れている伊織には、好感が持てた。
「伊織さま、大丈夫ですか?」
「これくらい、日常茶飯事だ」
これを毎日やっているのか。
人気者も大変なんだな、と駿はペンを走らせる伊織の肩に手を置いた。
途端に、ひどく驚いた伊織だ。
「な、何だ!? いきなり!」
「すみません。あの、肩を揉んで差し上げようかな、なんて思って……」
「なぜ?」
「伊織さま、とても大変そうで、お疲れでしょうから」
駿の返事に、伊織は全身の力が、ふっと抜けた。
ラブレターの返事を用意する作業。
(これを、大変だ、お疲れだ、と言ってくれたのは、彼が初めてだ)
「ありがとう。では、お願いしようかな」
「はい!」
(伊織さま、ありがとう、って言ってくれた)
駿は、せっせとサインする伊織の肩を、優しく揉んだ。
後ろを預けている伊織の背中は、もう怖くは無かった。
そして、それにも抜かりない準備があった。
ラブレターの山を前にするなど、彼にとっては毎日の日課なのだ。
「この原稿を68部コピーしてくれ。そして、こっちを46部」
「はい」
盗み見た伊織の返事は、2種類あった。
『お手紙ありがとう。これからも、その調子で私を慕ってくれたまえ』
『お手紙ありがとう。残念ながら、君の期待には応えられない。諦めてくれたまえ』
思うに、最初の返事は当たり障りのないファンレターへのものだ。
そして2番目の返事は、おそらく交際を願ってきた人間へ宛てたものだろう。
(たった一行なんて、そっけないなぁ)
それでも、コピーされた100枚以上の手紙に、直筆のサインをせっせと入れている伊織には、好感が持てた。
「伊織さま、大丈夫ですか?」
「これくらい、日常茶飯事だ」
これを毎日やっているのか。
人気者も大変なんだな、と駿はペンを走らせる伊織の肩に手を置いた。
途端に、ひどく驚いた伊織だ。
「な、何だ!? いきなり!」
「すみません。あの、肩を揉んで差し上げようかな、なんて思って……」
「なぜ?」
「伊織さま、とても大変そうで、お疲れでしょうから」
駿の返事に、伊織は全身の力が、ふっと抜けた。
ラブレターの返事を用意する作業。
(これを、大変だ、お疲れだ、と言ってくれたのは、彼が初めてだ)
「ありがとう。では、お願いしようかな」
「はい!」
(伊織さま、ありがとう、って言ってくれた)
駿は、せっせとサインする伊織の肩を、優しく揉んだ。
後ろを預けている伊織の背中は、もう怖くは無かった。
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