金曜日の少年~「仕方ないよね。僕は、オメガなんだもの」虐げられた駿は、わがまま御曹司アルファの伊織に振り回されるうちに変わってゆく~

大波小波

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「ああ!」
「ど、どうしたんですか、伊織さん!」
「やっぱり、卒業したくない! このまま駿と、永遠に一緒にいたい!」
「もう! またそれですか!?」
 しっかりしてください、と駿は伊織の腕を取った。
「車が待ってますよ。お屋敷へ戻りましょう」
「解った……」
 駿に腕を引かれて校庭を早歩きで去る伊織を、窓から見守っている人々がいた。
「名物生徒会長も、とうとう卒業ですか」
「この学園も、寂しくなりますなぁ」
 微笑み合うのは、3年生の担任たち。
 伊織には、散々手を焼いて来たはずの彼らだが、そのまなざしは温かい。
「案外、御影の尻に敷かれるかもしれませんよ?」
「違いない!」
 職員室は、笑いに包まれた。

 伊織は駿に連れられながら、首を横に向けた。
「待った。ちょっと待ってくれ、駿」
「何ですか?」
 寄りたいところがある、と伊織が向かったのは、学校園だった。
 まだ春も早く花の姿は見えないが、緑の息吹が力強い。
「駿、この小菊を覚えているかい?」
「あ、これは……」
 初めて伊織さまとお喋りした時に、話題に上げた、小菊。
「小菊の花言葉を調べてみたらね、『逆境の中でもめげない』とあったよ」
 まさに、君にぴったりの花言葉だと思わないか?
 伊織はそういって、菊の葉を撫でた。
 もう、あの可憐な花は咲いてはいないが、逞しい若葉が吹き始めている。
「君は、本当によく、私について来てくれた」
「嫌ですよ、伊織さん。過去形にしないでください」
 そうだった、と二人で笑った。
 これからも、共に歩むのだ。
 新しい世界を、まだ見ぬ道を。


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