恋は突然に愛は永遠に 【若当主アルファ×訳ありオメガ】 ～ツンデレ同士の両片思いは、実るんですか？～

第五章 やまない雨

「ちゃんと元の場所へ、捨てて来たな？」
「はい、確かに」
　それでいい、と拓真は手にしたグラスのシングルモルトを飲み干した。
　世界中の美酒をずらりと並べた、自慢のホームバーに、彼はいた。
　傍に、愛人たちの姿は無い。
　目障りだ、と追い払ってしまったのだ。
　そんな拓真の気まぐれと無慈悲さを、水瀬は悲しく思った。
（拓真さまは、人を愛する術を知らずに育ってこられたのだ）
　両親に、愛された記憶がない。
　だから、愛し方が解らないのだ。
　一礼し、水瀬はホームバーを後にしようとした。
　しかしそこで、拓真が声を掛けてきた。