月まで連れてって 恋に戸惑う闇クラブオーナー・アルファ×弟の為に身を売る健気・オメガ ~上下関係を越えた愛が生まれる~

大波小波

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 それにしても、と了は車を運転しながら考えていた。
「絶対、オーバーワークだ」
 隣に、遥はいない。
 コンビニに送り届け、その帰り道で思った。
「昼はコンビニ、夜は『コーラル』。そして、闇クラブ……」
 遥に彼の一日を聞いて、半ば呆れながら了は働き過ぎだ、と言った。
 しかし、遥は笑顔でこう答えた。

『僕が頑張れば、そのぶん弟が元気になれる日が近くなりますから!』

 弟思いは結構だ。
 オメガにしては、気力体力ともに強い。
「だが……」
 気を張り詰めて生きていると、ある日突然折れることは多々ある。
 了はこれまで、そんな人間を大勢見てきた。
「何事もなければいいが……。いや、何かあった後では、遅いな」
 少しでも楽に、遥が稼げる道はないだろうか。
 自然と難しい顔をしている自分に気づき、了は我に返った。
「私は、何を考えてる? 彼は商品の一つに過ぎないのに」
 だが、私はハッキリ言ったのだ。

『どうして了さんは、僕にこんなに良くしてくれるんですか?』
『君が気に入ったから、かな』

 そして、気に入った人間は贔屓にしたい。
「いいじゃないか。単純明快で」
 私は、遥が気に入ったんだ。
 それで、いい。
 ふ、と息を吐いて、了はアクセルを踏んだ。


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