月まで連れてって 恋に戸惑う闇クラブオーナー・アルファ×弟の為に身を売る健気・オメガ ~上下関係を越えた愛が生まれる~

大波小波

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「了さん!」
「……痛い」
 ピックで刺されても、淡々とした口調の了だ。
 目はらんらんと輝き、遠山を睨みつけている。
「う。うぁああ!」
 遠山は怯んで、アイスピックから手を放した。
 滑稽なくらい、取り乱している。

「遠山さん、退会していただけますね?」
「わ、解った!」
「それから。遥くんには、今後一切近づかないと約束できますね?」
「う、うんうん!」
「では。服を着て、今すぐここから出て行ってください」
 了に言われるまでもなく、遠山は急いで衣服を身につけると、走って部屋から飛び出して行った。

「了さん! しっかり!」
「ああ、泣くな。これくらい大丈夫だ。多分」
 すがりついて泣く遥の髪を、了は刺されていない方の手で撫でた。
 救急スタッフが駈け込んで来て、了の傷の具合を診ている。
 周囲の大騒ぎをよそに、了はぼんやり考えていた。

『それから。遥くんには、今後一切近づかないと約束できますね?』

 私は、このクラブへ、ではなく、遥に近づくな、と言ったのか。
 咄嗟のことで放った言葉だ。
 間違いなく、本心だろう。
「遥」
「はい」
「少し、痛い」
 そう言って、了は柔らかく笑った。


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