水曜日に待っている 【彼女もいるノンケの僕が、妖しい准教授に絡め捕られていく……】

大波小波

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 日が陰り、薄暗くなってきた。
 目でたどっていた文字が、読みづらい。
 望月 透(もちづき とおる)は、そのことで日暮れに気づいた。

「少し、遅いな」
 あとどのくらい、時間がかかるんだろう。
 透は、がらんとした学生用ラウンジで、林 美咲(はやし みさき)を待っていた。
 大学二年次になってから、透には彼女ができた。
 それが、一学年下の、美咲だ。
 明るく可愛い、学科のアイドルのような存在。
 美咲は大勢の人間に好かれたが、なぜか透を選んでくれた。

『いいの? 付き合う、って。でも、何で、僕!?』
『透先輩、大人っぽくて頼りがいあるから……』

 自分が他と比べて、大人だと感じたことはない、透だ。
 ただ、少し真面目で、落ち着きのある性格が、美咲にはそう見えたのだろう。

 読んでいたのは、美咲が貸してくれた恋愛小説だ。
 こんな恋ができたらいいな、と無邪気な年下の彼女は笑顔で言う。
(確かに、そんなところは子どもっぽい、かも)
 恋に恋しているような、少女らしさを、美咲はまだ抱きしめている。
 だが、その本も、暗くて文字が見えにくくなってきた。

「照明、点けようかな」
 透が椅子から立ち上がったところで、ラウンジに誰か入ってきた。

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