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しおりを挟む巧くいった、と加瀬は通話を終えると向き直った。
「速水はやはり、ここにいる。今から、マンションのエントランスセキュリティを解いてくれるそうだ」
章は、うなずいた。
加瀬が電話で話したことは、全てでたらめだ。
もちろん、パーティーに出席もしていない。
全ては、志乃が囚われている部屋へ殴り込むための、方便だった。
そこへ、加瀬が招集した若衆の一人が駆けて来た。
「加瀬さん。地下の駐車場に、確かにこのナンバーの車がありました」
「ご苦労。これで、決まりだな」
そのナンバーは、志乃が連れ去られた時に章が覚えて、メモしておいたものだった。
「さすが、章さん。見事な記憶力だ」
「いいえ、私なんか。加瀬さんこそ、親身になってくださって。しかし、これは……」
加瀬と章の後ろには、仁道会の精鋭たちが控えている。
誰もかれもが、屈強な面構えと体つきだ。
「少し、大ごと過ぎでは?」
「これくらいで、調度いいんですよ」
章は単独で乗り込むつもりだったのだが、加瀬は慎重になっていた。
もしかすると、志乃を誘拐した数名の男たちが潜んでいるかもしれないからだ。
そうでなくても、多勢に無勢で、すぐに郷が降参してくれることを願っていた。
章や志乃を、無傷で無事にこの騒動から解放する。
それが加瀬の、絶対の目標だった。
ほどなくしてセキュリティが解除され、章たちはマンション内へと駆けこんだ。
戦いの幕が、切って落とされた。
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