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しおりを挟む三月の手術は、無事に成功した。
経過は順調で、志乃は心配されていた合併症もなく、一週間ほどで退院できた。
「あんなに不安だったのが、ウソみたい!」
「志乃くん、油断は禁物だよ」
退院後は2週間後と、そして3ヶ月のちに、受診しなくてはならない。
それ以降は、6ヶ月に1回受診する。
定期的に外来に受診して、異常が無いかのチェックがあるのだ。
「私はもう、志乃くんに何かないかと心配で心配で……」
「ヤだなぁ、章さん。僕は大丈夫だよ!」
志乃は自分より母のことを心配していたが、彼女もまた、回復は早かった。
拒絶反応もなく、術後1ヶ月頃から散歩などの軽い運動ができるまでになったのだ。
志乃は母の手を引き、近所の公園によく出かけた。
「サクラ、終わっちゃった。もう少し早ければ、一緒に見られたのにな」
「でも、新緑がきれいだわ。志乃、本当にありがとう」
こうして再び、親子で外を歩けるようになるなんて。
母は、志乃がどれほどの苦労をして、手術費用や弟妹たちへの仕送りをしてくれていたのか、思いをはせた。
そして、そんな志乃を支えてくれた章にも、感謝した。
「章さんも。何てお礼を言ったらいいか」
「いいえ。私の助力など、些細なものです」
「それにしても……」
「何でしょう?」
母は、少し呆れたように小さく息を吐いた。
「あなたたち、仲が良すぎないかしら?」
母の手を引く志乃の片方の手は、章がしっかり繋いでいるのだ。
「別にいいじゃん。ホントにラブラブなんだから!」
悪びれるところのない志乃を中心に、明るい笑いがこぼれた。
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