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 就職してからは、竜也は母の元を離れてマンションで暮らしている。
 会社が用意してくれた、社宅だが。
 それでも、地方随一の不動産業が取り扱うマンションだ。
 優雅で快適な暮らしを、送っていた。
 
『その会社にも、竜也は父さんのコネで入社したのよ』
「ええっ!? 何それ、聞いてないけど!?」
『黙ってた方が、あなたのプライドを傷つけないと思って』
「だったら、最後まで内緒にしててよ……」

 とにかく母が言うには、無事に成人できたのも、一流企業に就職できたのも、父さんのおかげ。

『だから、ね。今のうちに、会っておきなさい』
「今のうちに、って。どういう意味?」
『父さん、末期がんで。もう長くないそうなの』
「な……!」

 突然のことが多すぎて、頭が、心が追い付かない。
 そんな竜也に、母は一方的に日時を決めてきた。

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