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 サイレンを鳴らし病院へ急ぐ救急車の中で、横たわった竜也は、ようやく声が出せるほどになっていた。
「朋……無事で、良かった……」
「僕は、大丈夫です。しっかりして、竜也さん」
「防弾チョッキを着ていたから、大、丈夫、だよ。……ッ痛」

 僕を助けるために、あんな危険な真似を。
 涙をぽろぽろこぼす朋の頬に、竜也は手を当てた。
 冷たい、手だ。
 朋はその手を取り、温めた。
 いつも、僕を温めてくれていた竜也さん。
 今こそ、僕が彼を温めてあげる番なんだ。

「朋……」
「何ですか?」
「今、すっごく、痛いんだ……」
 だから、痛み止めのおまじないが欲しい。
 そう言って、竜也は軽く片目を閉じて見せた。
「キス、してくれないかな」
「竜也さんの、バカ……。ホントに、もう……。馬鹿、バカ……」
 朋は、竜也の乾いた冷たい唇に、キスをした。
「朋は……あったかいなぁ……」
 二人は何度も、何度でも、キスをした。


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