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1話 目覚めた恐怖
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白川 瑞樹(しらかわ みずき)は、18歳。
今年、父の勧める大学へ進学した。
自宅から通える、地元の学校だ。
瑞樹はほかに志望校があったのだが、厳格な父はそれを許さなかった。
『オメガのお前は、父さんに従ってさえいればいいんだ』
そんな無茶な道理を、瑞樹は幼い頃から繰り返し浴びせられていた。
小柄で、愛らしい少女のような顔立ちの瑞樹を、周囲は可愛いと褒めてくれたものだ。
しかし、それも父親には気に入らなかった。
男は、男らしく。
強く逞しく、あるべきだ。
そんな前時代的な考えに、囚われていたからだ。
そして入学式を終えた今、また父の横暴な命令が彼を襲った。
「瑞樹、お前は柔道部に入りなさい」
「ぼ、僕が!?」
高校生の頃は園芸委員会で、花や木を育てていた。
格闘技なんて、体育の授業でしかやったことがない。
しかし、だからこそだ、と父は言う。
「お前はオメガだということに、甘えている。辛さや苦しさから、逃げてばかりだ」
瑞樹は、心の中で父に反発していた。
(園芸委員会、結構力仕事も多かったんだけどな)
それに、辛いことだってあった。
瑞樹は、草むしりが苦手だった。
雑草と言うだけで、抜かれてしまう野の草。
彼らにだって、ちゃんと名前があり、花を咲かせ、実を結ぶのに。
心優しい瑞樹には、花壇の園芸品種のためとはいえ、他の命を摘み取ることが苦痛だったのだ。
「とにかく、柔道部で心も体も鍛えなおせ! その弛んだ精神を、ピンと伸ばせ!」
(ひどいよ、父さん)
しかし、アルファの父に何を言っても無駄だ。
オメガの苦労など、伝わらないだろう。
そんなわけで、瑞樹は嫌々ながら柔道部に入った。
今年、父の勧める大学へ進学した。
自宅から通える、地元の学校だ。
瑞樹はほかに志望校があったのだが、厳格な父はそれを許さなかった。
『オメガのお前は、父さんに従ってさえいればいいんだ』
そんな無茶な道理を、瑞樹は幼い頃から繰り返し浴びせられていた。
小柄で、愛らしい少女のような顔立ちの瑞樹を、周囲は可愛いと褒めてくれたものだ。
しかし、それも父親には気に入らなかった。
男は、男らしく。
強く逞しく、あるべきだ。
そんな前時代的な考えに、囚われていたからだ。
そして入学式を終えた今、また父の横暴な命令が彼を襲った。
「瑞樹、お前は柔道部に入りなさい」
「ぼ、僕が!?」
高校生の頃は園芸委員会で、花や木を育てていた。
格闘技なんて、体育の授業でしかやったことがない。
しかし、だからこそだ、と父は言う。
「お前はオメガだということに、甘えている。辛さや苦しさから、逃げてばかりだ」
瑞樹は、心の中で父に反発していた。
(園芸委員会、結構力仕事も多かったんだけどな)
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「とにかく、柔道部で心も体も鍛えなおせ! その弛んだ精神を、ピンと伸ばせ!」
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そんなわけで、瑞樹は嫌々ながら柔道部に入った。
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