青いバラの花言葉 ～ミステリアス若様アルファ×不憫健気オメガ どうしよう。叶さんのこと、どんどん好きになっていっちゃう～

2

　自分の部屋に戻って、瑞樹は涙を流していた。
　厳格な父。
　小言の多い母。
　家庭内は、瑞樹にとって居心地の良い場所ではなかった。
「もう嫌だ。こんな家、いたくない」
　そこへ、控えめなノックがされた。

「瑞樹、大丈夫か？」
「兄さん」
　入っても、いいか。
　静かな声が、そう問いかけてくる。
　瑞樹は立ち上がり、自分でドアを開けた。
「また、父さんに叱られたらしいな。仕事、遅くなってごめん。俺がいれば、止められたのに」
　この家で唯一、瑞樹に優しいのは、アルファの兄だった。
　年が離れているせいもあり、幼い頃から何かと守ってくれていた。

　優しい兄が、優しい言葉を掛けてくれる。
　瑞樹はもう、泣きだしてしまいたい気持ちだった。
　だが、口に出したのは心にもない言葉だった。
「大丈夫だよ。兄さん、もう少ししたら家から出るでしょう。これくらい、我慢しなきゃ」
　まもなく実家を離れ、一人暮らしを始める兄。
　それは瑞樹にとって死の宣告に近かったが、精いっぱい強がって見せた。
　大丈夫、と笑って見せた。