青いバラの花言葉 ～ミステリアス若様アルファ×不憫健気オメガ どうしよう。叶さんのこと、どんどん好きになっていっちゃう～

6

　屋敷の東側に面した土地に設けられた、叶植物園。
　誠は、そこの再建に乗り出した。
　荒れ放題の植物を整えながらも、瑞樹は気が気ではなかった。
（そろそろ、あの蕾が開くころだよね）
　新しく雇われたスタッフと共に散水をしていたところ、息せき切って誠が駆けて来た。
「白川くん！　来てくれ、ちょっと！」
「い、一体どうしたんですか！？」
　いつもクールな誠が、見たことのない慌てぶりだ。

　瑞樹は腕を引かれ、足をもつれさせながら走った。
　連れて来られたのは、バラの温室だ。
　そして進んだのは、あの10株の蕾を付けたバラの鉢。
　その花開いたバラを見て、瑞樹は息を飲んだ。
　
「咲いたんだ、バラが！　青いバラだ、ほら！」
「わぁ……！」
　それは、澄んだ空のように青いバラだった。
　誠と瑞樹は、しばらく動けなかった。
　ただ、その青を目に焼き付け、涙をこぼした。
　やがて誠は深い息を吐き、瑞樹を真っ直ぐに見つめた。
「君のおかげだ。本当にありがとう」
「そんな。僕はただ、お手伝いをちょっぴりしただけです」

　君が入社した頃に、私はすっかり打ちひしがれていた、と誠は告白した。
　どんなに手を掛けても青い花を咲かせないバラを、憎んでさえいた、と。
「だが君の存在で、私の心は柔らかさを取り戻していった。バラに対する愛情を、取り戻していったんだ」
　瑞樹は、照れた。
　僕は、植物が好きで。
　そして、叶さんのことが大好きで。
　それで、がむしゃらに頑張って来ただけなのに。
　ありがとう、と手を取られ、瑞樹はこの上なく満たされた。