時の舟には二人で乗ろう~自分を隠して偽り生きるイケメン俳優とモフモフあやかし少年は、愛を通して心を取り戻す~

大波小波

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「ん? んんん?」
 比呂は、瞼を閉じたまま、鼻をひくひく動かした。
 いい匂い。
 くんくん、何だかいい匂い。
(知ってるよ、僕。この匂い)
 これは、隼人さんの匂い。
 大好きな隼人さんの、大好きな匂い。
(でも……?)
 比呂は、そこで幸せな気持ちに、疑問を割り込ませた。
 隼人からの連絡では、彼は今夜遅くなるはずだ。
 夕食は、CM撮影の打ち合わせを兼ねた接待を受けるので、用意しなくてもいい、と。
 そう。隼人さんは、ここにいるはずがない。
(だったら、これは夢だよね)
 一人で簡単な夕食を済ませた後、比呂はソファでうたた寝をした。
 ソファの上で見ている、夢だ。これは。
「比呂くん」
(む? ボイス搭載の、夢か?)
 それって、いいじゃん!
「隼人さん、好き……」
 だったら、僕もと、比呂は想いを口にした。

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