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しおりを挟む「この国の愚かな人間は、他国に戦争を仕掛けるようになった。100年くらい、前かな」
紫織の言葉に、隼人は反応した。
「比呂くんが、生まれた頃だね」
「吉永さんは、150歳だそうだよ」
比呂は、その100年間に相当な苦労をしてきたが、紫織は違った。
「軍需企業に、政治家。そして、軍の上層部。戦争で金儲けができる種類の人間は、いくらでもいた」
そして紫織は、そのような人間の手を渡り歩き、ぬくぬくと過ごしたのだ。
だが、彼にも誤算があった。
「軍高官の元にいた時に、敗戦しちまった。奴は戦犯として、あっという間に逮捕されたのさ」
巻き込まれては大変と、紫織は屋敷を出た。
そして、外の世界に驚いた。
解るよ、と比呂はうなずいた。
「街は空襲で、焼け野原。まだ焦げ臭い感じがしてて、身元が解らない遺体が、隅に転がってて」
「人間はみんな、飢えていた。その辺をさまよってるイヌやネコまで、とっ捕まえて食ってたっけな」
比呂と紫織の会話に、隼人は震撼した。
「話には聞いたことがあったが、それほど悲惨だったとは……」
ネコのままでは食べられてしまうが、ヒトの姿になるには妖力を使う。
気力体力をなるべく使わないようにするため、紫織はネコの正体を明かしたまま、隠れ逃げ惑った。
「そして次第に痩せ衰えて、もうヤバいな、と思っていたところに……」
「私の、ひいおじいさんに出会った、というわけですか」
そういうことだ、と紫織は瞼を閉じた。
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