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1話 優しい人

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 露希は、ゆっくり瞼を開けた。
 温かい。
 柔らかい。
 胸が切なくなるような心地よさを、全身に感じていた。
「ん……?」
 身をよじって周囲を見渡すと、そこは寝室のようだった。
 ふかふかの、大きなベッド。
 でもそれは、昨夜の地獄のようなホテルのものではない。
「僕、どうしちゃったんだろ」
 ヤクザの偉い人に、怖いペニスでいじめられて、気を失った……よね?
 その後を、よく思い出せない。
 でも、誰かが傍に居てくれたような気がする。
 ずっと付いていてくれて、優しくしてくれたような気がする。
「ここ、どこ?」
 体や髪からは、いい匂いがする。
 そういえば、あの優しい人が、お風呂に入れてくれたような……。
 ここは、その人の家なんだろうか。
 だったら、いきなり乱暴なことはしないだろうと、露希はベッドから起き出した。
 体には、ぶかぶかのパジャマが着せてある。
「きっと、あの人のパジャマだ」
 眠っている僕に、着せてくれたんだ。
 そう思うと、露希はその優しい人に、会いたくなってきた。
 そっとベッドから降りると、遮光カーテンでまだ暗い部屋の中を歩いて、ドアを開けた。



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