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 不意に、きゅっと誠の手が握られた。
 露希を見ると、照れたような笑顔がある。
 ふと見渡すと、周囲には手を繋いだ恋人たちが結構いるのだ。
「恋人ごっこに、付き合ってくれないかな?」
「いいよ」
 誠も、露希の手を握り返した。
 指を絡め、離れないよう体をぴったりと寄せ合った。
(恋人ごっこ、か)
 露希も、気づいているのだろう。
 私がこんなに優しいのは、外山さんや組長への義理の表れでしかないことを。
 嘘でもいいから。
 まやかしでもいいから。
 せめて、今だけは恋人。
 そう、たとえそれが児戯だとしてもだ。
「誠さん、僕のこと好き?」
「好きだよ」
 露希は頬を染めて下を向いたが、それはどこか悲し気な色を醸していた。

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