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しおりを挟むやがて日が西の海に沈み、黄昏時になった。
選ばれた若者が一人、松明を持って海を泳ぐ。
港からすぐそばの、鳥居のある小さな無人島に渡り、明かりを灯した。
人々は神に祈り、海に感謝する。
この土地の、伝統的な儀式だった。
和太鼓の音が、響く。
要は、その神事に感動していた。
「素晴らしい。この祭りに参加できて、よかったよ」
「ら……」
「ら?」
「ううん。何でもない」
来年もまた、二人で来たいね。
そう言いかけて、宇実は言葉を飲み込んだ。
二人にはもう、次がないのだ。
来年は、二人ではないのだ。
こみ上げてくる涙も飲み込んで、宇実は要と共にやぐらを見上げていた。
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