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しおりを挟む「要さん、金魚すくいしよう!」
「え? うん、だけど……」
「僕が、ちゃんと育てるから!」
宇実は明るくそう言うと、店主から二つポイを受け取った。
「はい。これで、すくってね」
「ありがとう」
宇実は、不自然にはしゃいでいる。
彼も、別れを間近に控えて、心が乱れているのだ。
無理して明るく振舞い、寂しさを紛らわしていた。
「ほら、こんなに大きな出目金すくったよ!」
「やるなぁ、宇実。よし、じゃあ私も!」
要もまた、見事に赤い金魚をすくい上げた。
紐付きの小さなビニール袋に泳ぐ金魚を手に、要は嬉しそうだ。
時々立ち止まっては、目の高さまで持ち上げて、その様子を見ていた。
「こんなに小さな、可愛らしい金魚を見るのは、初めてだ」
「要さんの家にも、金魚がいるの?」
「大きなランチュウが、10匹ほどいるよ」
「すごい!」
「あとは、庭園の池に錦鯉がたくさん泳いでいてね……」
要の声を聞きながら、宇実は願った。
いつか、見てみたいな。
要さんの金魚。
だがそれは胸の奥にしまい、ただ歩いた。
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