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しおりを挟む「城嶋さん、ちょっと入ってもいいですか?」
「え!? ま、待って!」
「入ります!」
「うわぁ! ちょ、やめ……!」
バスルームに立ち入った未悠が、湯煙の向こうに見たもの。
それは、グレーの毛に覆われた、獣体だった。
二本の足で立ち、ヒトの姿こそしてはいるが、明らかに異形のそれだった。
「城島さん、やっぱり。あなたは、獣人だったんですね」
「バレたか」
月は、満ちてきている。
獣人の体力や運動能力は満月に最も高まるので、健の異常なまでの回復力はそれでうなずけた。
「傷を、見せてください」
それでも心配な未悠は、健の腹を探った。
毛をかき分けて見てみると、そこはすでに白く盛り上がり、完全にふさがっている。
「ね。大丈夫だから」
鼻づらが少し長く変形した健は、軽い口調で言った。
「良かった……」
未悠の言葉に、健は真顔になった。
(この子は、本当に心から私を心配してくれたんだ)
そう思うと、こちらの心も緩むというもの。
健は、自らの素性を明らかにした。
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