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しおりを挟む翌日、千尋に渡された弁当箱は、いつもと同じものだった。
重箱でも飛び出すかと思っていたので、わずかに残念に感じた、弦だ。
だが、これは中身が充実しているに違いない、とお昼を楽しみに授業を受けた。
そして、昼休み。
弁当箱を開けた弦は、苦笑いした。
(フッ。クマの弁当か)
両端をとがらせて耳になぞらえた、いなりずし。
そこには、切り抜いた海苔や、うす焼き卵で顔が描かれている。
卵焼きにゴマで目がつけられたコレは、ヒヨコか?
見た目の華やかさで食欲が増せば、との千尋の心遣いだ。
弦はありがたさと同時に、微笑ましさを感じていた。
いただこうかと箸を持った、その時。
「あ~ッ! 何それ! キャラ弁!?」
隣の坂井が突然大声をあげて、弦の弁当箱を、のぞきこんできたのだ。
可愛い可愛い、と大騒ぎする坂井に、彼女の友達数名が駆け寄ってくる。
「いや、ちょっと。コレ、可愛すぎない!?」
「可愛い! ね、写真撮らせて!」
「SNSに、上げよう!」
男子までもが、席を立って見に来る始末だ。
騒然となった教室に、弦は焦った。
ただの弁当が、こんな騒動を起こすとは!
「いいかげんにしろ! 食えん!」
「え~! 食べちゃうの!?」
「もったいないよぉ!」
「クマさん、可哀想!」
「黙れ! 散れ!」
いつもなら5分で食べ終える弁当が、この日は1時間かかった。
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