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しおりを挟む「どうしました、山本先生」
「お、田中先生。いいところに」
弦の体育の授業を見ている、田中。
彼の身体能力に一目置き、柔道を勧めている体育教師だ。
「私のクラスの、海江田 弦なんですけど」
「海江田が、どうかしましたか」
山本の悩みの種は、弦に少し協調性が欠けている点だった。
真面目に授業は受けるし、注意も素直に聞く。
問題行動はほとんど無いが、いつも一匹狼で飄々としている点が気にかかる。
そう、山本は言う。
「確かに海江田は、柔道をやるにしても、仲間と一緒に、といった風ではありませんねぇ」
「彼に、友人と交流を持たせることができれば、と考えてるんです。体育祭は、良いきっかけになるかな、と思うんですが」
「なるほど」
「リーダーになる資質は、充分にあるんです。その力を発揮しない海江田が、惜しい」
確かに弦は他の生徒に比べ、抜きんでて存在感がある。
カリスマ性、というやつだ。
田中は、思いを巡らせた。
夏休み、強豪校の中に混ぜて柔道の稽古をやらせたが、彼は良い意味でひときわ目立って見えた。
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