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しおりを挟む「弦先輩」
自分の誕生日すら忘れるような、弦だ。
そんな彼が、千尋の誕生日は忘れまいと、わざわざカレンダーに印まで付けている。
嬉しい。
ちょっぴり、照れくさい。
先輩は、僕の誕生日に何をしてくれるんだろう。
何か欲しいものはないか、などと尋ねてくれるのだろうか。
期待に胸ふくらませ、千尋は10月9日を指折り数えて待つようになった。
「どうしよう……」
10月に入り、自分が書いた丸印を見るたびに、弦は焦りを感じるようになった。
千尋の誕生日。
大切な一日にしようと、張り切って暦に印をつけてはみた。
だが、どうして良いやら、名案がさっぱり浮かんでこないのだ。
千尋のように、好物の料理でもてなそうと思っても、炊事は苦手だ。
巧くいくはずがない。
プレゼント。
これも、まったく思いつかない。
弦は、以前に千尋から、白地にワンポイントの入ったTシャツをもらった。
制服の下にも着られる、シンプルなものだ。
しかし、それを見た柔道部の連中が、やたら興奮して褒めていた。
人気のブランドなのだろう。
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