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しおりを挟む「どうだ? 具合は」
「ごめんなさい、先輩……」
待ちに待った9日の当日、千尋は夜中から熱を出していた。
這ってでも行く、と駄々をこねたが、弦に布団へ捻じ込まれてしまった。
「朝夕は、冷え込むようになったからな。風邪をひいたんだろう」
弦の言葉に、千尋は心の中でそれは違う、と考えていた。
嬉しくて、楽しみすぎて。
興奮しすぎて熱を出しちゃったんだ、僕は。
(なんて情けない。まるで遠足前の子どもみたい)
どんなに悔やんでも、39℃もある熱を押して、遊園地へは出かけられない。
「また、次の機会を考えよう。遊園地は、逃げはせん」
「はい……」
でも、誕生日に遊園地へ行くことに、意義があるのだ。
千尋は、それが悔しかった。
熱で朦朧とし、寝たり覚めたりしているだけで時は過ぎる。
うとうとして目を覚ますたびに、窓から差し込む日の明るさが変わっていく。
遊園地へ行ってたら、今頃ランチして……。
遊園地へ行ってたら、今頃パレード見て……。
遊園地へ行ってたら、今頃お茶飲んで……。
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