弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう! ~硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか?~

大波小波

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 布団の中で丸くなり、過ごすはずだった楽しい時間を虚しく送る。
 すっかり夜になってしまった頃には、千尋の絶望はピークを迎えていた。
 そんなところへ、弦が寝室を覗いた。
 手には、トレイを持っている。
「飯ができたぞ。食うか?」
「弦先輩が、料理を!?」
「雑炊を作った。食べられそうか」
「はい! いただきます!」
 料理が苦手な先輩が、雑炊を作ってくれたのだ。
 それだけでも、素敵な誕生日プレゼントのように、千尋には思えていた。

「すまんな。誕生日なのに、御馳走もできなくて」
「いいえ。弦先輩がここにいてくれるだけで、僕は嬉しいんです」
 そう。この日常が、何より嬉しい贈り物。
 千尋は、そのことを充分解かっていた。
 思いのほか食欲は回復しており、千尋は雑炊をあっという間に平らげた。
 体温も、ほぼ平熱に戻っている。
「あ~あ。この分だと、きっと明日は元気ですよ。今日が日曜日だなんて、ついてないな」
 今日が土曜日で明日が日曜だったなら、一日遅れではあるが遊園地へ行けたはずだ。
「学校は、サボれんからな。諦めろ」
「はい」

 食事を終えると、シャワーを浴びたいなどと言い出す千尋だ。
 熱がまた上がるといけないから、と弦は必死でそれを止めた。
「気持ちが悪いです、先輩」
「一日くらい風呂に入らなくても、死なん。我慢しろ」
「じゃあ、蒸しタオルで体を拭いてもいいですか?」
「まぁ、それくらいなら」
 まだ少しふらふらしている千尋の代わりに、弦はタオルの準備を始めた。


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