弦先輩と千尋の日常は晴れ時々くもり所によりドキドキするでしょう! ~硬派先輩×可愛い後輩 幼馴染だった二人は恋に落ちていく……のか?~

大波小波

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「お帰りなさいませ、ご主人様」
「う~ん」
 弦の言葉に、千尋が唸る。
「お嬢様、って言う練習も、そろそろやりましょうか」
「……お嬢様、か」
「男子のお客様には、メイドさんの女子が応対するんでしょう? 先輩がお相手をするのは、きっと全員女子ですよ」
「そうか、確かに」

 じゃあ、もう一回、と千尋が玄関を出て行く。
 再びドアを開け、ただいま、と入ってくる。
「ぅお帰りなさいませッ、おッ嬢様ッ!」
「もっと力を抜いて、先輩!」

 そんなこんなで、入ってきた客に『お嬢様』と言う練習。
 椅子をひく練習に、メニューを差し出す練習。
 さらに飲み物を出す練習、などなど、千尋の指導のもとに弦の特訓が始まった。

 特訓をしながら、千尋は新鮮な喜びを味わっていた。
 いつも無口で鷹揚に構えている弦が、細やかな気配りで接してくれるのだ。
 しかもそのような気遣いは特訓の時間だけにとどまらず、日常の端々にも表れ始めた。
 食事を終えると食器を下げてくれたり、進んでお茶を入れてくれたり。
(これって、すごく嬉しいな!)
 なんだか顔つきも、立ち居振る舞いまでも、穏やかになった気がする。
 ギラギラとした野性味あふれる弦もいいが、こんな優しい姿もまた素敵だ。
 心の中で坂井に感謝しながら、千尋は毎日楽しく弦の訓練に付き合った。

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