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しおりを挟む全く、と丈士は眼鏡を外した。
「とにかく、出て行け。そして、二度とここへは来るな」
「僕、丈士さんのこと気に入っちゃったんだぁ。ね、石川さんのこと、話して」
でないと、と七瀬は丈士に流し目をよこした。
「おまわりさんに、ここに悪い人が住んでます! って言っちゃうから」
ふぅ、と息をつき、再び眼鏡をかけると、丈士は石川について語り始めた。
「石川さんは、原崎会の組員だ。俺を、手足に使ってくれてる人だ」
「ヤクザさん? じゃあ、丈士さんもヤクザなの?」
「俺はまだ、ヤクザじゃない。見習い、みたいなもんだ」
「ふ~ん。僕と同じだね」
「お前と一緒にするな」
石川はシノギのひとつとして、まったく新しい脱法ドラッグの開発を手掛けている。
法の取り締まりが厳しくなった今、密輸密売も難しい。
そこで、まだあまり知られていない植物に目を付けた。
それら由来の化学物質を使ったドラッグを創り出し、闇取引するつもりでいるのだ。
「未知の化学物質だと、毒性が強くて死んじゃうんじゃない?」
「使った途端に意識不明になって死なれたんじゃ、シノギにならないからな」
石川さんも、そこは考えてるっぽい、と丈士は答えた。
「まだまだ、研究の余地はあると思う。被検体を使って、安全性を確かめてるらしい」
「安全な危険ドラッグ、かぁ。矛盾してるね。素敵!」
「素敵、だって?」
丈士は、しげしげと七瀬を見た。
この天使のような見た目を持つ生き物は、全くもって悪魔なのだ。
そう、思い知らされた。
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