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1話 不機嫌と意地と強がりと

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「いただきまーす!」
「いただきます……」
 七瀬が丈士宅へ居候を始めてから、二週間が過ぎていた。
 彼は頼みもしないのに、朝食を作ってふるまうようになっていた。

「勘違いしないでよね。これは、僕が食べたいから作ってるんだからね」
「じゃあ、何で俺の分まであるんだよ」
「いざという時、力が出なかったら困るじゃない」
「いざという時? 例えば?」
「悪事を働く時」
「お前はいっつも、それだな」

 しかし、七瀬の料理の腕は、意外なことに良かった。
 胃が慣れると、もう朝食抜きの生活には戻れなくなってしまいそうだ。
「はい、ミルクティー」
「サンキュ」
 こんな柔らかい朝日の中でのやりとりを終え、丈士は大学へ行くようになっていた。

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